臭いの分子そのものを悪臭がしない分子に変えてしまうという方法が薬液洗浄法と生物脱臭法。薬液洗浄法は化学的な薬品を使って違う分子に変えるもので、生物脱臭法は匂いの元になる物質を食べる細菌をうまく活用し、匂いを分解する。
2019年には海水の電気分解により、次亜塩素酸ナトリウムを自家生成する仕組みを取り入れた循環型の薬液洗浄であるISEC方式を開発。これまで必要だった貯留槽が必要なくなるため、スペースが少なくて済み、運転コストや二酸化炭素排出量の削減も果たしている。2021年にはにおいかおり環境学会技術賞を、2022年には第48回優秀環境装置表彰にて日本産業機械工業会会長賞を受賞した。
同社での作業にはかなり幅広い知識が必要とされる。「電気分解するという電気の知識も必要ですし、微生物の知識も必要。さらに空気が通る装置なので機械工学の知識も必要ですし、それから化学や材料にまつわる知識が必要です。浅くとも幅広いような知識を持った、ユニークな人材が集まっている会社だと思います」(濱口さん)
濱口さんは、「我々の業界は目立たない方が本当はいい」と話す。それは、目立つということは悪臭公害が起こっているということになるから。ただ、悪臭公害がないという状況は何もせずに得られているわけではないことを世の中の人にもっと知ってもらいたいという。「そうすることで、次の世代に技術も繋がっていくことを願っています。悪臭公害が少ないということが日本の強みで、この状況がずっと続いていけばいいなと思います」(濱口さん)
また、脱臭技術は業界全体としてある程度完成された領域にまで高まっているため、そこからどう技術革新を続けていくのかが課題だそうだ。濱口さんは「海外に進出する方向性もありますし、とにかくにおいの新たな領域を掘り起こしていきたい。私たちとしては、せめてプラント系のケミカルなにおいから解放される現状を維持するため、これからもさらに技術を高めていきます」と締めくくった。
※ラジオ関西『こうべしんきん三上公也の企業訪問』2023年7月18日放送回より