滋賀県生まれの映画『てんびんの詩』、世界へ 働く者の心を動かす“商いの地”ならではの物語とは | ラジトピ ラジオ関西トピックス

滋賀県生まれの映画『てんびんの詩』、世界へ 働く者の心を動かす“商いの地”ならではの物語とは

LINEで送る

この記事の写真を見る(3枚)

 滋賀県といえば、琵琶湖に代表されるように河川や山など豊かな自然が有名なイメージがあります。しかし、実は古くから商人が活躍する土地でもあり、滋賀県生まれの商人は「近江商人」と呼ばれ、商いの世界でも特別視されてきたのです。

 同県において近江商人が活躍した理由として、「他の土地と行き来しやすい琵琶湖があったたから」「大坂や京都など、文化や商業の中心地に近かったから」など諸説ありますが、商社の「伊藤忠商事」や百貨店の「高島屋」など、令和の現代も続く大企業が生まれた土地であることは確かです。

商人や商いの地でも知られる滋賀県(イメージ)

 そんな商人の地で制作された“ある映像作品”がありまふ。タイトルは『てんびんの詩』。滋賀県の商人の家で生まれた少年・近藤大作が父親の言葉をきっかけに「商い」をする旅に出る……というストーリーです。この映画は企業の研修などで上映され、多くの新入社員やビジネスパーソンたちにとっての教科書的な存在となっているのだとか。
 
 多くのビジネスマンが見てきたという『てんびんの詩』。作品を収録したDVDを販売している「オフィスTENBIN(旧:日本映像企画)」(所在地:滋賀県大津市)に、起源を聞いてみることに。

滋賀県生まれの「近江商人」は日本各地で活躍しているという(イメージ)

「『てんびんの詩』の原作者にあたるのは、オフィスTENBINの前身である日本映像企画の創業者・竹本幸之祐です。竹本は、もともと県内の行事や企業にまつわる映画を制作していました。そのかたわら、商人の生き方や商売への考え方などについて語る講演でも活動していました。次第に、竹本は『同じ話では聞く人も退屈だろう』と考えるようになったそうです」(オフィスTENBIN)

 そんなある日、企業の経営者などが集まる講演で、修行のため少年が鍋蓋を売り歩く話を簡単にかいつまんで話した竹本氏。この話こそが『てんびんの詩』の原型ともいえるエピソードでした。仕事を通じて知り合った滋賀大学の江頭恒治氏からの話をアレンジしたものでしたが、その話を聞いた聴衆から、すすり泣く声が聞こえてきたそうです。

 のちに竹本氏は「商人は、最初から順風満帆ではない。彼らは、自分が初めて商いや営業活動で血を吐くような辛い思いをした経験を思い出したのだろう」と振り返ります。そんな聴衆の1人に、自動車用品を販売する「ローヤル(現イエローハット)」という会社の創業者・鍵山秀三郎氏がいました。

「鍵山氏は、人々を感動させた講話が映画化されてないと知ると『資金は出すので映画化してほしい』との要望を出しました。竹本からしても願ってもない話でしたので、喜んでお話を受けたそうです。脚本はわずか1週間ほどで完成し、映画自体も1年足らずで完成しました」(オフィスTENBIN)

 その場にいた聴衆たちの心を掴んだ竹本氏の講演は、驚くべき速さで映画化にまで至りました。さらに、すべての始まりである「原点編」にくわえ「自立編」「激動編」と、3部作が完成。次第に企業の研修教材として使用されるようになり、ビデオテープの「VHS」時代を含めると、おそらく4~5万社もの企業から購入されたそうです(正確な数値は不明)。また、経済学部のある大学や商業高校で副教材として採用されているところもあるのだとか。

「あくまで企業研修で使用されることが多い映画なので、個人で購入したり、一般の映画館などで上映されるケースは稀。そのため、知らない人もかなり多いと思います。そのため、この映画を見たことがあるという人は、かなり勉強熱心で真面目な企業、もしくは個人のビジネスマンであるといえるかもしれませんね」(オフィスTENBIN)

近江生まれの商売人を描いた映画『てんびんの詩』は、現在も研修教材として活躍している(イメージ)
LINEで送る

関連記事