2025年に開催が迫った大阪・関西万博に合わせ、兵庫県では体験型観光プログラム「ひょうごフィールドパビリオン」が展開されています。その一環として、金物のまち兵庫県三木市で造られた鉋(かんな)の技術を用いて、世界一硬い食品ともいわれている鰹節を削る体験プログラムが実施されます。
体験場所である兵庫県三木市は、約1500年の歴史をもつ「金物のまち」。特に大工道具で知られる「三木金物」は、鍛冶職人の手作りの技と良質な素材によって成り立っており、三木金物製品のうち、鋸(のこぎり)、鑿(のみ)、鉋(かんな)、鏝(こて)、小刀(こがたな)の5品目が、国の伝統的工芸品に指定されています。
また、播州三木打刃物(ばんしゅうみきうちはもの)は、型に入れて作る「鍛造(たんぞう)」という技法を用いて作られる工芸品としても有名です。その品質と性能は全国的に評価され、今では海外からの注文もあるほどです。
◆体験プログラム誕生のきっかけ
三木市から約540キロ以上離れた、鹿児島県指宿市の山川水産加工業協同組合とのコラボレーションによって実現しました。指宿市は、日本有数の鰹節生産量を誇るまちです。
中でも最高級の鰹節といわれる本枯節「指宿鰹節」は、明治時代から受け継がれてきた市の特産品のひとつ。熟練の職人たちの思いと技術を伝えるため、鰹節と削り器のセットを考案しました。しかし、購入者からは「うまく削れない!」という声が寄せられました。
一方で、金物のまち三木市も、近年の工業化工法などにより、基幹産業である大工道具の需要が減少。伝統技術の継承などの課題を抱えていました。そこで、九州経済産業局と近畿経済産業局がタッグを組み、お互いの強み(特産品)を活かして課題解決を図るため、この企画が生まれました。
◆製造工程見学や鰹節削り体験も!
プログラムを実施する鉋専門の「株式会社常三郎」では、日本古来のモノづくりの現場を間近で体験。鉋の製造工程見学では、約1000度以上に熱した窯に飽の刃の原料を入れ込んで、鍛造により成型する工程を間近で見学します。実際に鉋削りも体験でき、職人と直に接する機会も。
もちろん鰹節削りの体験も実施。本枯節には腹と背があり、腹の方は油分が少し多いのだとか。水分を極限まで無くした本枯節は、硬質でカチンカチン。しかし、削りたての本枯節は、市販品とは異なる独特の風味と口当たりを味わえるのだそう。プログラムでは、自ら削り器で削った本枯節を、卵かけご飯などにのせて試食できます。
地域を超えて日本を代表する特産品同士が出合い、共に問題解決を目指すことはSDGsにもつながります。突き抜けた強み同士のタッグを体感できるこのプログラムを通じて、日本古来から続く文化やモノづくりの魅力を再認識するきっかけになるかもしれません。
(取材・文=市岡千枝)
◆株式会社常三郎
◆山川水産加工業協同組合
◆体験プログラムに関する問い合わせ先:株式会社常三郎(0794-82-5257)