大阪・関西万博の目玉として、“いのち”をテーマとする「シグネチャー・パビリオン(テーマ館)」 を手がける8人のプロデューサーの1人、中島さち子氏が20日、大阪市内でパビリオンの概要を説明した。
中島氏は高校時代、数学に没頭し、1996(平成8)年の国際数学オリンピック・インド大会で日本人女性初の金メダルを獲得。東京大学理学部で数学を学ぶ一方、ジャズに出会い、一転してジャズピアニストとしても活躍。現在は、数学や芸術などを横断的に学ぶ「STEAM(スティーム)」教育を推進している。
パビリオンの名称は 「いのちの遊び場 クラゲ館」。 木材を多用しているが、基本は鉄筋2階建てで、延床面積は1634平方メートル、高さ約12m。半透明で、ゆらゆらと海を浮遊する”クラゲ”をモチーフとして膜を張った大きな屋根(約40mx約35m)が特徴。大和ハウス工業(本社・大阪市北区)が建物を提供する「建物現物協賛」という形式を取った。同社などが同日、大阪天満宮(大阪市北区)で工事の安全を祈り、祈願祭を執り行った。建設工事は10月1日にも着工、2024年9月30日に完成予定。
建物は万博閉幕後も活用される予定で、子供の遊び場やミュージアムへの転用が検討されている(具体的な場所は現時点で非公表)。建築を担当する小堀哲夫氏は、「水族館へクラゲを見に行った時、植物でもあり、動物でもあり、常に生命の始まりを感じるような美しさを感じた。クラゲがいろんな“いのち”をつないで生き続けるイメージ」と話した。軽量化を意識し、すべてユニット材として分解可能。解体しても転用できるようにした。構造は複雑に見えるが、一定のルールにのっとり設計を施した。
例えば、木材は同じ寸法で、ロープで結んでいる。組み立てと解体は合理性を持つようにして『終わったら壊す』のではなく、『いのちと同様、つないでいく』ことを考えたという。
中島氏は「完成しきったもの(パビリオン)を提示するのではなく、クラゲ館を作り上げるプロジェクトを展開する中で、“ワクワク”を探す旅に出かけてほしい」と考えている。クラゲは、揺らぎや透明性、変容を象徴している。クラゲには脳や心臓はないが、光と毒があるのが興味深いと語る中島氏。現代社会を「答えがなく、問いも揺らぐ時代」とも称している。
そして、「コ・クリエーション(Co-Creation 助け合う・共創)という観点も重要。点と点をつなぎ、多種多様な存在と交わる技術を見て、単に『すごい』だけで終わらずに、自分の中にいのちの光を感じて、未来を創る感覚を持ってほしい」と話した。
■シグネチャーパビリオン「いのちの遊び場 クラゲ館」プロモーション動画 ⒸsteAm Inc. & Tetsuo Kobori Architects All Rights Reserved
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