神戸徳洲会病院(神戸市垂水区)で、カテーテルの治療後に複数の患者が死亡するなどした問題が発覚し、被害者を救済するための弁護団が設立された。8月31日付。
弁護団では、被害にあった患者や家族からの相談を受け、その立場で原因の調査や被害者の救済、再発防止策などを提言する動きにつなげたいとしている。
神戸徳洲会病院では、2023年1月以降、 循環器内科の男性医師(2023年1月に赴任)がカテーテル治療を行った後に心臓病患者が死亡した。 このうち、一部の患者の電子カルテで記載漏れが判明、治療の経過や死因を患者の家族に説明した記録もなかった。この医師は、患者の容体が急変した後も状態を確認していなかったという。
2023年6月、匿名で「この男性医師がカテーテル手術を実施後、死亡や容体が悪化した患者が約10人いた」という内容の告発文書を受けた神戸市が病院に事情を聴くと、男性医師は循環器内科のカテーテル室の業務を実質的に1人で担当していたことなどが新たにわかった。
神戸市は8月28日、病院に対し是正を求める行政指導を行った。病院の安全管理体制に問題があるとみている。病院側は外部の専門家に検証を依頼するとしている。
「神戸徳洲会病院被害弁護団」は、兵庫医療問題研究会に所属する、医療過誤問題に精通した兵庫県内の弁護士14人で構成されている。
団長の松本隆行弁護士は、2006(平成18)年に神戸拘置所で男性収容者(当時29歳)が凍死した問題で、 医療水準の確保や、カルテ開示の制度化などに向けた調査に携わった。
27日の会見で、「まず、相談の受け皿になればと思う。病院という密室的要素の強いところでの人権侵害や、医療過誤問題に関わるにつけ、医療水準に応じた医療が確保されるかを考えてきた立場として、事前防止はもちろん、問題が起きた時に速やかにキャッチできたか、それを是正できたかが問われる。病院内部で問題を提起できたか、それを受け止めることができたかを検証できれば」と話した。
具体的には、個々の相談を受けてカルテなどの診療記録を精査、医学文献の検討や専門家(医師)の意見を聞いて、診療行為に問題があったかどうかを独自に調査する。
弁護団の小野郁美弁護士は、「医療現場では、患者と担当医師の情報量の差が大きく、患者は自分の身に何が起きているのかわからないことが多い。カルテの開示も、かつてに比べればハードルが下がり、しかるべき手続きを取れば任意で受けられるようになった。これらを積み重ねることで、最終局面での医療安全の申し入れや、刑事告訴、民事訴訟の提訴も視野に入れる」と述べた。
相談は無料。兵庫医療問題研究会のホームページ(http://www.hyogo-iryoken.com/)から申し込みができる。申し込み後、担当弁護士から直接連絡する。
TEL 078-371-5617 ※平日9時~12時、13時~17時 土日祝は除く
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