《神戸・男子高校生殺害事件13年》父は語る「家族の力」知った刑事裁判、将太さんがつなぐ“絆” | ラジトピ ラジオ関西トピックス

《神戸・男子高校生殺害事件13年》父は語る「家族の力」知った刑事裁判、将太さんがつなぐ“絆”

LINEで送る

この記事の写真を見る(13枚)

判決公判前の神戸地裁法廷<2023年6月23日 ※代表撮影>

「身勝手、一方的」。男は事件後、10年10か月の逃亡期間に父親の赴任先の中国にも行き、ドイツへサッカー留学もしていたことが明らかになった。男の父親が証人尋問で語った。

 敏さんは「その“愚かな”判断は、お父さん、あなたなのですね」と問うと、父親は「そうです」と答えた。敏さんは「自分の子どもが満足するなら(気が済むなら)、人を殺してもいいのか」と怒りをあらわにし、裁判長が思わず制止した場面もあった。「犯行そのものが一方的ならば、その後の生活も勝手なものだった。男はただただ逃げていたとしか思えない」と振り返る。

公判終了後、敏さんは連日会見に臨んだ

 刑事事件の控訴審は▼量刑について不服▼法解釈が正しかったか▼一審の審理は尽くされたか、が主な柱となる。敏さんは「一審(裁判員裁判)はしっかりと審理された」と話す。確かに、真実をもっと知りたい、もっと聞きたいことはあった。こうした中、男に下された一審判決は懲役18年。

 少年法51条には、犯行時18歳未満の被告について「死刑と無期刑を緩和する」との項目があり、

▼罪を犯したときに18歳未満で死刑を選択する場合は、無期刑に刑罰が緩和される。
▼罪を犯したときに18歳未満で無期刑を選択する場合は、有期の懲役か禁錮に刑罰が緩和される。その刑は「10年以上15年以下」。

 その後、2022年に刑法12条が改正され、▼懲役は、無期及び有期とし、▼このうち有期懲役は、「1か月以上20年以下」となった。

神戸地裁

 今回、検察側は男の犯行態様の悪質性を考慮して、無期懲役の選択もあり得ると述べたが、犯行時17歳だったことを鑑み、無期懲役ではなく有期懲役の選択を示した。その上で刑法12条に定めた上限として懲役20年を求刑していた。

 神戸地裁はさらに、「もっとも、人を殺してはならないことは犯行時17歳の少年であっても理解できないはずはなく、この事件を未熟さゆえの犯行などとみることはできない」と刑事責任の重さを指摘した。しかし懲役18年という量刑については、「犯行当時の被告人が前科のない17歳の少年であったという事情は、非難の程度を考えるにあたって無視できない」と述べ、「大きく刑を減ずることはできないが、一定の考慮は必要だ」とした。

 敏さんは判決後、「ぎりぎりの決断だったのかも知れない。現状の法制度では最大限だと思う」と評価した。遺族代理人の河瀬真弁護士は、「18年という刑罰が、将太さんの死という重大な結果を少しでも償うことができる期間なのかといえば、決してそうではない。ただ単に少年だから、未熟だから、という理由でむげに刑が減軽されることがなかったのは、ひとつの成果だったと思う」と述べた。

遺族代理人・河瀬真弁護士「犯行時少年だったことが理由で、むげに刑が減軽されることがなかったのは、ひとつの成果」

 敏さんはこの時、毎日朝方まで眠れず、すっかり痩せていた。妻・正子さんと、長男、長女、次女と5人で臨んだ刑事裁判。みんな疲れ切っていた。ストレスに苦しんだ。一審判決が終わり、張り詰めた緊張が解けたが、疲れを取り除くことはできなかった。「これだけ、エネルギーを費やすものとは思わなかった」と振り返る。

LINEで送る

関連記事