近年耳にする機会が増えてきた「8050(はちまる・ごうまる)問題」(※1)。高齢の親が中高年の子どもの引きこもり生活を支える状況を指し、日本の社会的な課題となっている。このたび、ひきこもり経験者2人がラジオ番組に出演。自身の経験について語った。
1人目の経験者・トシさん(男性)は、10年にわたりひきこもり生活を送っていたという。高校生のころに体調を崩したことをきっかけに不登校となり、学校を中退。その後、約6年間アルバイトを続けたものの、辞めてからは徐々にひきこもりがちになっていった。
あるとき、両親から声をかけられて足を運んだのが、神戸市が設置している公的なひきこもり相談窓口「神戸ひきこもり支援室」だったそう。長い時間をかけての面談や、ハローワークを紹介してもらったことで、「自分がなにをしたいのか、という目標を見つけるのが目標」ということがわかってきた。「人と人とのつながりが大事だということに気づけた」そうで、今では支援室でさまざまな人と交流することができるようになったという。
続いて登場したメイさん(男性)も、約10年間のひきこもり生活を経験した。大学中退後の就職活動でうまくいかなかったことを発端として、少しずつひきこもるように。労働意欲はあったものの「どのように動けばいいのかがわからなかった」という、当時のやるせない思いを振り返った。
昨年夏、父を亡くしたというメイさん。父の死をきっかけに「動かなければ」と決心したのと同じタイミングで、姉が支援室を予約していたのだそう。「正直いやだな」という思いは拭いきれないままだったが、母と姉に連れてこられる形で支援室を訪れた。
支援室で“方向性を決めるお手伝い”をしてもらい、「どのように動けばいいのかわからない」という悩みが解消。さらに、自分の得意不得意に気づけたことで「これまでは自分にとってのしんどい方にばかり動いてしまっていたことがわかった」と明かした。
ひきこもり生活では、他者とのコミュニケーションの機会が極端に少なくなってしまい、悩みを打ち明けることも難しくなる。自身の思い・悩みを話せないことが孤独感にもつながってしまう中、支援室は“ひとりではない”ことを知る場になり得ると言える。
神戸市ひきこもり支援室では、先月9月から11月までの3か月間にわたりオンライン講演会を実施中。専門家として神戸市看護大学の船越明子教授が登壇するほか、ひきこもり経験者も出演。自身の経験談や社会参加に至るまでの経緯などを紹介する。
同講演会の開催を踏まえ、ひきこもり経験者のトシさんとメイさんはそれぞれこのように語った。