インバウンド(訪日外国人)の姿が街に戻り、大阪・関西万博が2025年に迫る。子どもたちにも高齢者にも安心して乗ってもらいたい…。大阪メトロでは、「国際都市・大阪の多様性と地域の特性を生かして、魅力的なデザインや機能を進化させ、駅そのものをワクワクする空間として楽しんでいただけるように」との思いから、地下空間の大規模改革に着手した。
動物園前駅のデザインコンセプトは、「地下にいながら、まるで自然のなかにいるかのような空間」。1969(昭和44)年の改装時に設置されたホームの「動物タイル」を保存・活用した。
これまでは平面で見ていた動物の姿だったが、タイルの前方に約30センチの白色の壁をせり出すように設置した。動物を描いた部分はくり抜かれ、のぞき見る孔(あな)を設置することで、森の動物たちが、まるで額縁の中で見え隠れするような楽しさを演出した。
そして、この孔の一部はベンチとして活用し、比較的狭いホームに開放感と奥行きを持たせた。さらにセンサーが人間を感知することにより、タイルに描かれたライオンやゾウ、キリン、サルの鳴き声を聞くことができる。
駅の空間で目をつぶると、まさに「動物園」にいるかのような演出にした。そこにメトロの疾走感や乗降客の声、アナウンスも重なるところが面白い。
ホーム階には、時間帯や季節によって変化する演出照明を施した。そして、天王寺動物園の最寄りとなる東コンコース(1、2番出口に直結)は、一部拡張して待ち合わせスペースを設置、イラストレーター・つちもちしんじ氏のグラフィックアートで、動物園前駅周辺の雰囲気を感じることができる。