動物園前駅の周辺には通天閣やジャンジャン横丁、天王寺公園のほか、あべのハルカスがそびえ立ち、広大な芝生広場「てんしば」も整備された。新旧の大阪の風景が混在する、インバウンドにとっても魅力的で観光需要の高いエリアとなった。
大阪メトロの説田(せった)隆二建築部長によると、駅リニューアルは民営化前から計画があったが、民営化後は特に、安全対策という部分的な工事ではなく、乗客にいかに快適な空間を提供することが必要かを考え、インパクトのある取り組みになったという。
そのうえで、「好評の“動物タイル”を生かしながら、新しいものを作ろうというのが今回のねらい。“地下空間の暗さ”は、民営化以降大きな課題だったため、単なる移動のための空間ではなく、明るさを重視した。一般的に”狭い”といわれる地下駅を、壁に工夫を施したベンチの設置方法や、広くすっきりとした空間としたことも独自性が高いリノベーションだ」と抱負を語った。
JR各社や私鉄の駅の場合は、新駅の建設や鉄道高架化に伴う新設というケースが多いが、地下駅のリニューアルとなると、従来のスペースを超えない範囲での工夫と知恵が求められる。
海外や国内の鉄道会社からの問い合わせや現地見学も多いという。関係者は「民営化後、鉄道のみならず、さまざまな事業をスピード感を持って進めるようになった。交通局時代からの伝統を引き継ぎつつ、お客様に高い付加価値を感じていただけるような交通インフラを目指したい」と意気込む。
大阪メトロ主要15駅のリニューアル、現在は御堂筋線の淀屋橋、天王寺、中央線の堺筋本町、大阪港の各駅の工事が進んでいる。大阪・関西万博の開幕直前、2025年3月にはすべてのリニューアルが完了するという。