幼いころから馴染みのある筆記用具と言えば“鉛筆”と、多くの人が答えるのではないでしょうか。大人になったいま、鉛筆を持ってみると漢字練習をしてこすった右手が真っ黒になった事や、短くなった鉛筆をギリギリまで使った経験が蘇ります。
今回はそんな鉛筆についての歴史をはじめ、「鉛筆は六角軸で色鉛筆は丸軸なのはナゼなのか」といった“世間であまり知られていないコト”について三菱鉛筆株式会社の寺杣さんに話を聞きました。
世界初の鉛筆は1560年代にイギリスのボローデール鉱山で濃く、滑らかな良質な黒鉛が発見され、筆記用具として使われるようになったものだと言われています。日本では徳川家康の遺品から見つかった約6センチの鉛筆が日本に現存する最も古い鉛筆なのだそう。日本で本格的に鉛筆が使われ始めたのは明治維新後の事で、その当時はドイツからの輸入品でごく一部の人達が使うものでした。その後、1887年(明治20年)に三菱鉛筆の前身である「眞崎(まさき)鉛筆製造所」が日本で初めて鉛筆製造の工業化したことで、日本中で鉛筆が手軽に利用されるようになっていきました。さて、現在の鉛筆は六角形が一般的ですがそのワケとは?
一つ目は「転がさないようにするため」。丸軸だと机などに置いたときに転がりやすいため、角を作りそれを防止しているのです。
二つ目は「持ちやすさ」。鉛筆を持つ時は、通常、親指と人差し指・中指で持ちますよね? そのため指を置くための角が“3の倍数”であるということが持ちやすさにつながります。三角形は角が多くて持ちにくい……そういった理由から3の倍数かつ、一番持ちやすい形として六角形で落ち着いたといいます。ちなみに鉛筆が3の倍数である九角形ではないのは、角の数が奇数だと高度な製造技術を必要とし量産が難しくなる事や、多角になればなるほど丸に近い形となってしまうため親指・人差し指・中指の3点を意識しにくくなるからなのだそう。
一方、色鉛筆はほとんどの製品が丸軸です。なぜなのでしょうか。
色鉛筆は鉛筆と違って文字を“書く”というよりも、絵を“描く・塗る”という作業に使われるので、持つ際に重要な3の倍数を意識する必要がないというのが大きな理由。さらに、色鉛筆は絵を描く際の技法やタッチによって様々な握り方・持ち方が発生します。それに対応するため丸軸が採用されているのだそうです。