寒暖差の激しいこの秋。季節の変わり目による体調の悪化には充分に気をつけたいところ。既に風邪や秋の花粉症による鼻づまりで寝苦しい夜を過ごしている人もいるのではないでしょうか。筆者も鼻づまりや鼻水に悩まされる日々が続いていますが、ふと思ったのは「なぜ鼻の穴は二つあるのか」ということです。人間を含めほとんどの動物の鼻の穴は二つあるのが当たり前の認識です。ではなぜ一つだけではなく二つある必要があるのでしょうか。
耳鼻科専門医の高島雅之先生(たかしま耳鼻咽喉科・内科院長)に話を聞きました。
なぜ鼻の穴は二つあるのでしょうか? 高島先生は「一つの説ですが」と前置きした上で「鼻は多機能過ぎるので、休ませる必要があるからです」と言います。「鼻は『匂いを嗅ぐ』『呼吸をする』以外にも、『加温と加湿』『脳を冷やす』などマルチな機能を果たします」といいます。
人は肺で効率的な酸素と二酸化炭素の交換を行うために適切な温度と湿度が必要であることから、鼻で吸い込んだ空気を鼻の奥に到達するまでに、吸った空気を「加温」と「加湿」させてから肺に届けているのだそう。人が極寒の地でも生きていけるのは、この鼻の機能が大きな役割を果たしているようです。
そんなマルチタスクをこなすために鼻が行っているのが「ネーザルサイクル」と呼ばれる“鼻の休憩”です。
「鼻の中の粘膜の一つ『下鼻甲介』は普段から左右のどちらかが腫れるか、しぼむかを交互に繰り返しています。腫れている側は呼吸を休止させることにより、鼻の機能を修復していると言われています」(高島先生)
鼻は人が眠っている間にも24時間働く必要がありますが、その多機能性ゆえに休まないとオーバーワークになってしまうのです。そこで鼻の穴が二つあることにより、片方を休ませ交互に働くことで鼻の機能の維持が可能となっているのだそうです。ちなみに鼻づまりはアレルギーなどによる異常な粘膜の腫れにより起こるそうで、鼻の調子が良く息の通りが良い時も、少なからず片方は休むために粘膜が腫れているようです。
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鼻の穴の数にもちゃんと理由があることがわかりました。ちなみに、クジラの中でもハクジラ類は鼻の穴が1つしかないようです。
(取材・文=宮田智也)
◆高島雅之氏の著書
専門医が教える鼻と睡眠の深い関係 鼻スッキリで夜ぐっすり