洋服に流行があるように、バッグにも大きさや形、デザインなどその時々のはやりがある。最近、街中でよく目にするのが小さいサイズのバッグ。これにはどのような背景があるのだろうか。社会の動きとバッグの関係や昨今のバッグ事情などについて、ハンドメイドのバッグと小物を扱っているサンタ・アガータ(神戸市東灘区)の山口なちさんに聞いた。
山口さんによると、近年はやはり小型のものが人気の傾向にあるという。昨今どんどん進む“キャッシュレス化”の影響が大きく、スマホやカードだけが入る程度の大きさが主流になりつつあるそう。形としては、ポーチや巾着のような、片手にちょっとぶら下げて持てるようなものが人気なのだとか。また、秋冬はスエードや起毛といった温かみのある素材のバッグを購入する人が多いとのことだ。
サンタ・アガータは12年前にオープンした。山口さんはそれまでにどこかで修業したことはなく、バッグの学校に行きはじめて以降趣味で作り続けていた。「自分のものばかり作っていたら、あっという間に増えてしまって。いっぱいあっても使い切れないので『販売してみようかな』と思い、イベントなどに出店したのが始まりです」と山口さん。
そこから店を構えるまでになったものの、コロナウイルスが猛威を振るっていた時期は人々の外出も激減したことからバッグは不要となった。よってオーダーも全部止まってしまったのだそう。山口さんは「世間的にマスクが足りない時期、マスクはミシンさえあれば作れるためひたすらマスクを作っていました」と振り返る。
コロナの落ち着きとともに、最近は外出人口も増加。だからといってバッグの売れ行きもよくなったかというと「そうでもない」とのこと。物価上昇で材料費も上がっていることに加え、「買い物を控えよう」という消費者の意識変化が拍車をかけているのだとか。
「商品のお値段をちょっとだけ上げたいな……と思いつつ、『上げると売れないだろうな』という相反するふたつの思いがあって実際は微妙なところ。とはいえ、売り上げは少しずつ回復傾向にあります」(山口さん)
バッグを作りたい人向けのレッスンも実施している山口さん。
「初心者クラスともうワンランク上くらいの方が対象。趣味で作ってはいるものの『手芸の範囲からあと一歩上達したい』と考えて来られる生徒さんが多いですね」(山口さん)