黒柳徹子が小学生だったときの実話を書いた世界的ベストセラーが劇場アニメとして初めて映画化されました。『窓ぎわのトットちゃん』が12月8日(金)、全国東宝系でロードショーされます。
これは、第二次世界大戦が終わるちょっと前まで、実際に東京にあった小学校と、そこに本当に通っていた女の子のお話です。
東京の大井町線・自由が丘駅。トットちゃんはママに連れられて電車を降りました。トットちゃんは小学校1年生で、電車に乗ることがあまりなかったので改札口で切符を渡したくありません。そこで駅員のおじさんにこう言います。
「この切符、もらっちゃいけない?」
「ダメだよ」
駅員のおじさんはトットちゃんから切符を取り上げて、箱に入れました。トットちゃんは改札の箱にたくさん溜まっている切符を見て尋ねます。
「これ、全部おじさんの?」
「おじさんのじゃないよ、駅のだから」
「わたし、大人になったら切符を売る人になろうと思うわ」
それを聞いて駅員のおじさんは言いました。
「うちの男の子も駅で働きたいって言ってるから、一緒にやるといいよ」
トットちゃんが応じます。
「おじさんとこの子と一緒にやってもいいけど、考えとくわ。わたし、これから新しい学校へ行くんで忙しいから」
待っているママのところへトットちゃんは走って行きます。
「わたし、切符屋さんになろうと思うんだ!」
ママは驚きません。
「でも、スパイになるって言ってたのはどうするの?」
トットちゃんは少し考えて、いい案を思いつきました。
「ねえ、本当はスパイなんだけど、切符屋さんなのは、どう?」
ママはトットちゃんの手を引いて先を急ぎます。
「さあ、遅れるわ。校長先生が待ってらっしゃるんだから。もうおしゃべりしないで、歩いてちょうだい」
トットちゃんは好奇心旺盛で人とおしゃべりするのが大好きなのですが、落ち着きがないという理由で、通っていた小学校を退学になってしまいました。そこで、自由が丘にある「トモエ学園」へ転校しようと、校長先生と面談するためにやって来ました。
トモエ学園は校庭に電車の客車を並べて教室として使っていて、それを見たトットちゃんはワクワクします。トットちゃんは校長先生に言いました。
「わたし、この学校に入りたいの。そうすればお外の電車に乗れるんでしょ」
原作は、黒柳徹子が終戦前の激動の時代を背景として自身の幼い頃を書いた自伝的物語。『窓ぎわのトットちゃん』は1981年に出版され、日本国内で800万部を突破するベストセラーです。ハードカバーのほか、これまで文庫・新書・絵本が発売されました。
タイトルの「窓ぎわ」は、トットちゃんの連載が雑誌で始まった1979年頃、出世コースから外れた中年などなんとなく疎外されている人が「窓ぎわ族」と呼ばれて流行語になり、トットちゃんも退学になった小学校でチンドン屋さんを見たくていつも教室の窓ぎわにいたことが元になっているそうです。