もうすぐお正月。日本では多くの人が家族や親せきと集まり、おせち料理やご馳走を囲みます。なかでも雑煮は正月に欠かせない料理のひとつ。土地や家庭ごとに個性が出るため「●県の雑煮には●●が入っている」「つゆはすましか味噌か」など話題に事欠きません。
しかしながら、なぜ正月に餅を食べるのでしょうか? 餅でないといけない確固たる理由が存在するのでしょうか? 切り餅や鏡餅を販売する『サトウ食品株式会社』広報・PR担当の浅川梨乃さんに話を聞きました。
「諸説ありますが、一般的にお餅を食べる風習は平安時代から続くと言われており、健康や長寿を祈願して行われた正月行事の『歯固めの儀』に由来します。餅は年神様が憑依すると言われていることから神聖なものとされていました。それをいただくことで、無病息災のご利益が得られ健康で過ごすことができると考えられていたため、お正月に食べることが習慣化したそうです」(浅川さん)
昔の鏡餅は丸く平たい形で2段にしており、その形から円満や平和、人間の心臓などの意味が込められていたと浅川さん。「鏡餅」という名前の由来は、三種の神器の銅鏡とも似ていることから鏡餅と呼ばれるようになったそうです。
雑煮やおせち以外の“正月ならではの風習”といえばお年玉ですが、昔はお金ではなく餅を配っていたそう。鏡餅を飾った後、切り分けて食べると年神様のご利益を頂けると言われていることから、神様の力が付いた餅がお年玉として配られるようになったそうです。そこから転じて現在ではお金を渡すようになったと言われています。
餅は日本全国で食べられているものの、形は東日本と西日本で異なると浅川さんは言います。
「他の地域からの影響を受けて混合している場所もありますが、西日本では丸、東日本は四角形が主流ですね。分岐点となる岐阜県ではどちらの形も使われている地域があります。京都府はお雑煮発祥の地のため丸餅が主流で、山形県の一部地域では京文化の影響を受けていることから丸餅を使うそうです。弊社では12月になると、西日本で丸餅の売り上げが特に伸びます」(浅川さん)
雑煮やおしることいった和風な食べ方をイメージする餅ですが、浅川さんによると洋風や中華風・スイーツとしても楽しめるとのこと。例えばスイーツ系だと、スティック型の餅にチョコレートスプレッドをディップしながら食べるのもおすすめだそう。
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餅を食べる意味や由来などを考えながら、来たる正月を楽しんでみるのもいいかもしれませんね。
(取材・文=迫田ヒロミ)