「どこにでもある街」にしないために 観光地の課題を“可視化”する観光地理学 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

「どこにでもある街」にしないために 観光地の課題を“可視化”する観光地理学

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 劇作家・演出家 平田オリザさんのラジオ番組(ラジオ関西『平田オリザの舞台は但馬』)に、演劇と観光が学べる四年制公立大学「芸術文化観光専門職大学(CAT)」(兵庫・豊岡市)の准教授・池田千恵子さんが出演。但馬の観光地が抱える課題について語った。

 2023年に同大学に着任した池田さんは、リクルート、大学職員を経て50歳で博士号(創造都市)取得という異色の経歴の持ち主。専門は観光地理学と都市地理学で、地域の変化を地図化して分析する研究に取り組んでいる。なかでも、「ツーリズム・ジェントリフィケーション」「アルベルゴ・ディフーゾ」の2つを軸に研究を進めている。

「ツーリズム・ジェントリフィケーション」とは、過度な観光戦略の結果、新たな観光関連施設の開業や高所得者層の居住開発、不動産投機により住民の立ち退きなどが生じる現象だ。

 京都を例に挙げると、「オーバーツーリズム」が神社仏閣といった既存の観光地における混雑などを示すのに対し、「ツーリズム・ジェントリフィケーション」は、町家や小路など観光地でなかった場所での宿泊施設や飲食店の増加が住民に与える影響を示す。海外でも、イギリスやスペインなど、歴史的建造物が立ち並ぶ観光地などで多く見られる。

 現在の状況について、池田さんはこのように警笛を鳴らす。

「(『ツーリズム・ジェントリフィケーション』は、)個人で宿泊手配ができるようになったここ10年で加速しています。京都の路地は本来、外部の人が立ち入らない安全なコミュニティスペースでしたが、いまではスーツケースを引く観光客が往来し、地元の商店が廃業した後にカフェやスイーツ店ばかりが建ち並ぶようになりました。路線価が上がり、ひとつ間違えると、どこにでもある似たような景観になってしまいます」(池田さん)

 金沢では、地元の伝統工芸や食品などを扱う店舗にのみ出店を認めるなどの対策を講じているのだそう。近年、兵庫県・城崎においても新店ラッシュが続いており、路線価が上昇していることからも「誰が・いつ・どのタイミングで、意思を持って持続可能な観光の方向性を打ち出すかが重要」だという。

 池田さんのもうひとつの研究テーマ「アルベルゴ・ディフーゾ」とは、まち全体を「宿」に見立てることで宿泊施設としての機能をまちの各所に分散させ、人の往来を生み出すこと。その土地に根付く歴史・文化・人の営みを観光資源として活用することで、その土地ならではの持続可能な経済を生み出すことを示す。もともとは、震災後、廃村の危機に直面した地域を復興させるための取り組みとしてイタリアで生まれた考え方だ。

 日本では岡山県矢掛町がいち早く取り入れ、江戸時代に宿場町として栄えた街並みを生かした古民家再生が行われている。平田さんも、「城崎温泉では、自然発生的にこの考え方のもとでまちが作られているんですよね。それが素晴らしい」とコメントを残した。

 来年度からは専門職大のゼミ生とともに、朝来市が目指す「アルベルゴ・ディフーゾ」に伴走し調査を始めるという。

 朝来市はかねてより、観光基本計画に「周遊型まちなか観光の誘客推進」を掲げており、見直しを進めてきた。「竹田城」や「あさご芸術の森」など観光客の滞在時間が短い観光資源は多いが、それらを結ぶ交通手段が車しかないなど、課題も多い。

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