◆「月に1度精神科に通院していて、先生に1か月の経過を話しています。しかし、自分の症状をアウトプットすること・先生との対話が心理的にきつく、早く話を切り上げようと考えてしまいます。アウトプットや対話など、きっちりと症状と向き合うためには、どのようなことが大事でしょうか?」
【井上先生】 あまり知られていないかもしれませんが、実は、この悩みは精神科では“あるある”なんです。何も話せない人や、診察室に入って最初のあいさつの声が出ないという人も多くいます。先ほどお話しした通り、“話す”ことにはかなり勇気がいるんですよね。特に、初対面の医者や距離がある医者に自分のことを話すのはかなり勇気がいると思います。だから、決してめずらしいことではないということを分かってほしいと思います。
そのうえでの向き合い方としては、事前に書いていくのがラクです。声が出ないときは、症状を書いたメモを渡すだけという人もいます。まさに、主治医への手紙のような感じですね。
症状と向き合うためのアウトプットのコツとしては、回数や時間についてある程度具体的に書いていただきたいと思います。たとえば「眠れない」という相談でも、1週間のうち2日だけなのか、毎日なのかで対応や考え方も変わってくるので、具体的に教えていただければ主治医としては助かります。文章としてきれいに書かなくても、「毎日3時間くらいしか眠れない」「夜になると不安になる」など、伝えたいことの箇条書きで大丈夫です。
【近藤】 私の友人に、子どもがひどいいじめによって傷を抱えているため精神科に通っているという人がいるんですけど、子どもは先生の前では「大丈夫だから! 全然傷ついてないから!」と強がってしまうみたいなんです。家ではあきらかに様子がおかしいので心配して連れていくんですけど、いつも話してくれなくてそのまま帰るというのが続いているみたいで。子どもの場合はどうしたらいいのでしょうか。
【井上先生】 これも非常によくあることなんです。大人でさえ自分の気持ちを言語化することは難しいため、お子さんにとってはなおさら難しいと思います。その場合も、親御さんが自宅での様子をメモし、事前に受付に渡すという方法をとっても良いかと思います。事前に知っているからこそ対応できることもありますし、伝えやすい方法を取っていただけたらと思います。
【近藤】 本来は、自分が傷ついていることを認めて、話すことができて、そこからどうしていくかということだと思うんですけど、そこに立つまでが難しかったりしますもんね。
【春名】 うまく伝えられなかったとしても、相談しようと行動しているだけで素晴らしいですよね。自分で抱え込まずに人に頼るということも強さなんだと思いました。
【近藤】 先生に言われてハッとしたのが、人に話すというのも勇気がいること、そしてそこも強さだということ。こうしてメールを送ってくれたり、人に話そうと思って考えを書くだけでもすごいことなんだと思いました。
※ラジオ関西『Clip月曜日』2024年1月29日放送回より