大阪・関西万博の開催に合わせて兵庫県で展開されている「ひょうごフィールドパビリオン」。その一環として、丹波地域の3つの特産品をフル活用した、おはぎ作り体験プログラムが実施されています。
丹波市の特産品といえば、「丹波栗」と「丹波黒大豆」、そして「丹波大納言小豆」。これら“丹波のスーパースター”を使って、地域の人と一緒におはぎを作ります。
同プログラムを実施する、株式会社ゆめの樹 野上野の中井健さん。「地域の人とふれあいながら、丹波の素材をおいしく活かすアドバイスや、地域の歴史や文化などを伝え、地場力を活かした食育交流体験を目指しています」と話します。
できあがったおはぎはその場で食べることも、包装して持ち帰ることも可能。また9月上旬には期間限定でシャインマスカットを使った大福作りもできるのだそう。使用するシャインマスカットは自社栽培されたもので、ここにも地元の恵が活かされています。
またプログラム内では、焙烙(ほうろく)で「ほうじ茶作り」も体験。焙烙で日本茶を焙煎することで、日本茶の歴史や文化にもふれることができます。「日本の文化の素晴らしさを感じてほしい。かぐわしい香りにつつまれた炒りたてのお茶は感動しますよ」と中井さん。さらにオプションで法話や座禅体験なども追加できるそう。座禅体験終了後には、境内で自分で作ったおはぎや大福を日本茶と共に味わえる。高台からの景色を眺めながらの一服は、このうえない贅沢な時間に。
同プログラムは、SDGsの視点からも色々な取り組みが行われています。たとえば「住み続けられるまちづくり」がその一つ。
丹波市春日町野上野は、水はけがよくミネラル豊富な西向きの日当たりの良い傾斜地を生かして、平成のはじめ頃までは多くの果樹園があり、年間約10万人が訪れていたそうです。しかし高齢化や後継者不足により多くが閉園してしまい、今は耕作放棄地が増えて問題となっています。
そこで、農地の有効活用を進めていて、丹波栗1000本、シャインマスカット106本などを集落で栽培する生産基盤を整えています。農地を守ることは、これまで地域住民が取り組んできた果樹栽培の高い技術やノウハウを、未来へ継承することにもつながります。
果樹栽培は収穫まで数年かかるそうですが、丹波で生産される果樹や農産物はブランド化されていて高級品として流通しています。それを同プログラムのように「 コト消費」として提案したり、地元加工メーカーと連携して商品開発することで、さらに付加価値を高めることにつながります。
こういった取り組みが若手農業者の育成や雇用の創出、そして地域経済の活力向上につながると、中井さんは考えます。「丹波のスーパースター3つをフル活用した 『おはぎ作り体験』を通じて、丹波の自然の恵とSDGsへの取り組みを知って感じていただければ嬉しい」と語ってくれました。
(取材・文=市岡千枝)