卒業シーズンです。渋谷トレンドリサーチが先日発表した「卒業記念に楽しみにしているイベントは?」という調査によると、1位に「寄せ書き」、2位に「記念撮影」など定番なイベントが並ぶ中、3位には「好きな人から花束をもらう」、4位は「ティアラをつけて記念撮影」というあまり聞き慣れないイベントが並んでいました。
「卒業式といえば『第2ボタンをもらう』では?」と思った筆者。もう廃れた文化なのかと思いきや調査では9位にランクインしており、今も卒業式の定番イベントとして残っているようです。しかしなぜ貰うのは“第2ボタン”なのでしょうか? 1930年から学生服を販売するトンボ(東京都台東区)に話を聞きました。
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第2ボタンである理由は諸説あるものの、有力な説の一つとして挙げられるのが「太平洋戦争時のある物語」とトンボは言います。
「太平洋戦争時、あるところに兄弟がおりました。弟はまだ学生で兄は兵役に就く前に結婚。兄が出征した後には兄嫁と弟が残されました。弟はいつしか夫の身の安全を気遣う兄嫁に惹かれていき兄嫁もそれに気がついていましたが、国のために戦っている兄や弟を思うとそのようなことを口に出せる状況ではなかったのです」(トンボ)
かなりドラマティックな説が飛び出してきました。さらに話は続きます。
「そこから戦局は悪化し、ついに弟にも召集令状が来て出征の日を迎えます。物資欠乏から、弟は軍服ではなく学生服を着て出征することに。戦地でいつ死ぬかも知れない身である弟は、兄嫁にどうすることもできない情愛の思いを伝えるため、また自分の分身として持っていてもらえるものとして胸の第2ボタンを渡したのでした」(トンボ)
由来は若い男女の禁断の恋でした。ではなぜ第2ボタンだったのでしょうか。「学生服は自分の誇りである学生の証であり、自分の肌身に接していたものであること。また、こころ(胸を指す)に一番近い位置にあるのが第2ボタンだったからです」とトンボ。
トンボいわく、この物語は戦前に既に知られていたものの軍国主義の時代では公にできる内容の話ではなかったため当初は封印されていたとのこと。しかし、戦後しばらく経って、先述の兄弟を教えた恩師がこの話を校長に話し、校長が感銘を受けて生徒に聞かせたところから徐々に話が広がっていったそうです。
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戦争によって産まれた、はかなく切ない恋の証であった“第2ボタン”。 SNSで検索すると「第2ボタンを貰えた」と喜びの報告をする投稿を多く見つけることができました。時代は変われど、いつまでも残っていくものなのかもしれません。