古くから庶民が慣れ親しんできた駄菓子「かりんとう」。小麦粉を砂糖や水などと練り合わせて油で揚げ、砂糖や蜜をかけた和菓子だが、その起源は諸説あり、8世紀ごろに中国から伝わった唐菓子や、16世紀ごろに長崎に伝わった南蛮菓子から発展したものと言われている。
日本で庶民に広がったのは江戸時代で、茶の文化と共に城下町で流通したとされているが、兵庫県姫路市にある姫路城の城下では、藩主の酒井家の歴代当主が茶の湯を好んだことから和菓子文化が発展したのに伴い、「播州かりんとう」という独自の系統が誕生した。
一般的なかりんとうと違うのは生地。通常は“こねる”だけの工程に、“ふむ・のばす”という2つの作業も加えることで、うどんのようにしっかりした硬めの生地が出来上がり、食べごたえのある食感を生み出す。この製法は、当時家老を務めた河合寸翁の命で長崎に派遣された菓子職人が、オランダ商館で習得したものという。「奉天」「うず巻き」など、工程により形や呼び方はさまざまだ。
姫路には、代々その製法を受け継ぐ店が数件残っているとのこと。戦中戦後の苦難を乗り越えて技術を伝えてきた「常盤堂」は創業80年以上を誇る老舗だ。小麦粉・油・砂糖といった素材にこだわり、気温・湿度の管理や分量調整など、長年培ってきた職人技で伝統の味を守る。一方で挑戦も欠かさない。ほうれん草やかぼちゃ・にんじん・たまねぎなどを生地に練り込み、野菜の自然の味とかりんとうの優しい甘さをマッチさせたものなど、新たな商品も打ち出している。
播州かりんとうは、兵庫県の名産品として県内各地の店での扱いも多い。同店のかりんとうを開業当初から扱っているという産直市場「ナナ・ファーム須磨」(神戸市須磨区)の担当者は、「上品な甘さと歯ごたえが味わえる播州かりんとうは好評。棚に並べると知らない間に無くなっていることもしばしば」と話す。
兵庫駄菓子の代表格、播州かりんとう。「かりん!」という音を響かせながら伝統の味を楽しみ、歴史に思いをはせるのも良さそうだ。
※ラジオ関西『Clip月曜日』3月4日放送回より