阪神・淡路大震災から今年で29年。当時のことを風化させないようにと語り継ぐ動きも大きくなっています。被災企業や店が、苦労やつまずきを乗り越えて前進する姿も、教訓やメッセージを私たちに伝えます。震災で甚大な被害を受けた神戸市須磨区板宿地域に、店舗全壊から立ち上がり、地元への貢献を胸に歩み続ける店があります。
焼肉「松一」は地域に愛され、創業から30年の歴史を刻んでいます。現在代表取締役を務めるのは水原俊治さん。店は、水原さんの両親が始めました。
開業当時高校生だった水原さんは、店を手伝っていたそうです。しかし、開店から一年ほど経ったころ、阪神・淡路大震災の発生により店が全壊する事態に見舞われました。
被災してから約1年かけて、店はなんとか復旧。復旧までの1年間、水原さんは技術を身につけるべく、東京にある知り合いの焼肉店で修行を重ねたそうです。その後、前代表である父が病気で他界したため、23歳で店の経営を担うことになりました。
代表取締役に就任する前は、ホルモンを担当していたという水原さん。精肉を切る作業はそれまで担当したことがなく、父が切っている様子を見ていただけでした。当時について水原さんは、「今のようにYouTubeやネットが発達していなかったので、近隣の肉屋さんに教えてもらいながら切り方を学びました。今では2時間で切れるところを、当時は6時間かけて切っていました」と振り返ります。
コロナ禍では、店は3か月ほど休業していましたが、震災のときと同じく常連客たちに支えられてなんとか乗り越えたそうです。
サッカー・J1のヴィッセル神戸に所属する選手のほか、野球、ラグビーの選手などのサインが数多く並ぶ店内。「常連の方がヴィッセル神戸の選手を担当する美容師で、その方が連れて来てくれて口コミで広がっていきました」と、水原さんは笑顔で話しました。
水原さんは今後について「店を拡大してチェーン店を出していきたい」とコメント。さらに、「板宿の町の活性化や、発展に向けても貢献したいです」と意欲的に語りました。
(嵐みずえ/バンク北川)
※ラジオ関西『ばんばひろふみ!ラジオDEしょー!』2024年3月13日放送回より