ごはんのおともの1つが、「のり(海苔)」。その産地を皆さんは意識したことがありますか? いま、のりの国内生産量トップは、実は兵庫県なんです。さらに、20年ぶりに日本一に輝いた昨シーズンに続き、今シーズンも生産量が全国1位。昨年38年ぶりに日本一となったプロ野球・阪神よりもひと足先に連覇を達成しました! ところが、調べてみると生産量1位を素直に喜べない事情があるようです。いったいなぜでしょうか。関係者に聞きました。
明石海峡を中心とした潮流の速い漁場で育まれた兵庫県産のりは、潮流と寒冬の季節風にもまれ、色が黒く、つやが良いのが特徴です。
のりの漁期は12月から翌年の5月まで。兵庫県の発表によると今シーズンは約12億3千枚ののりが生産され、産出額は約260億円。生産量、産出額ともに日本一となりました。
関係者もさぞ喜んでいるかと思ったのですが……。
「兵庫県の生産量が特別増えたわけではありません。兵庫県が2年連続日本一になる前は、佐賀県が19年連続日本一で、兵庫県はずっと2位や3位に甘んじていました。しかし、今は九州の生産量が非常に落ち込んでいて、それで兵庫県が1位に。兵庫県も他人事とは思えません」と話すのは、兵庫県魚連のり流通センターの担当者です。
のりの国内需要量は約75億枚。しかし全国の今シーズンの生産量は約49億枚と大幅に下回っています。佐賀での生産量が激減したのが響きました。近年、佐賀をはじめ九州では深刻な雨不足となっていて、のりのエサとなる窒素やリンを含む栄養塩が不足し、生産量が激減。今シーズンは佐賀県で約9億8千万枚と、生産量1位だった2021年度と比べ半分近くにまで減少しました。
兵庫県は漁期後半に雨に恵まれ、生産量に大きく影響を受けることはありませんでしたが、「異常気象は近年どこで起きてもおかしくないので安心はできません」(担当者)と危機感を強めています。
対策は行なっています。それはズバリ「海をキレイにしすぎない」こと。
近年、日本では環境対策が進み海に流れる工場排水を非常にキレイにしています。しかし人間には良くてものりには死活問題。排水をキレイにしすぎた結果、のりのエサとなる窒素やリンを含む栄養塩が不足し、全国的に不漁の原因となりました。兵庫県も例外ではありませんでした。
そこで兵庫県では、もちろん人体に影響がない範囲で、2019年度から窒素の濃度に下限値を設け排水をし、栄養塩のレベルを保ってきました。それにより、のりの生産や色落ち対策にも効果が見られているとのことです。
「このまま何もしなければ国産のりがなくなってしまうかもしれない。できることは何でもして、のりを守っていきたい」と、県漁連のり流通センターの担当者は力強く話します。
連覇を果たした兵庫県産のりですが、我々も積極的に国産のりを食べることで生産者の皆さんを応援していきたいですね。
※ラジオ関西『Clip』2024年5月15日放送回「トコトン兵庫!」より