神戸市東灘区にある老舗酒蔵・安福又四郎商店が開発・販売を行っている、日本酒の味わいをイメージした玄米茶。フリーアナウンサーの清水健と絵本作家の夏きこがパーソナリティーを務めるラジオ番組で、誕生の経緯について話を聞きました。
安福又四郎商店は、1751年創業で270年以上の歴史がある酒蔵です。神戸・灘五郷の御影の地で、手仕込み少量生産の日本酒を醸造してきました。代表銘柄は、灘の地酒「大黒正宗」で、江戸時代には将軍家・徳川昭武公を藩主とする水戸藩へ御用酒を納めていました。1995年の阪神・淡路大震災では木造蔵全8棟が全壊したものの、1棟のみ残った蔵で酒造りを続けました。
「伝統を途切れさせてはいけないというプレッシャーはなかったのか」という問いに、安福又四郎商店の安福愛さんはこのように答えました。
「伝統というか、“預かりもの”だと思っていて。『次の時代に残っていけるような形で、次の世代に渡していけるように』とは思ってきました。今まで培ってきた伝統の土台があるからこそできる挑戦を、今のうちに重ねていかないと続けられないなと考えています」(安福さん)
そんな挑戦のひとつとして考えられたのが、“酒蔵が開発した玄米茶”。日本酒をつくるために使う酒米・山田錦を使用しており、日本酒の味わいをイメージして設計した玄米茶専門ブランド「玄米茶88(ハチジュウハチ)」として、2022年にリリースされました。
ブランド名の「88」は、「米」という漢字が88歳の祝いである「米寿」の由来といわれているように分解すると「八十八」になることと、茶摘みに1番いいといわれている「八十八夜」からきています。
開発のきっかけは、安福さんが子育て中にお酒が飲めなかったことから。8年前にこどもを授かり、初めて「お酒が飲めない」という状況に陥った安福さん。外食でおいしい料理を食べる際、飲みもので困ることが増えたといいます。
「“おいしい料理を楽しむための飲みもの”は、アルコールでもノンアルコールでも、あったほうがうれしい。お酒を飲む人も飲まない人も同じテーブルでおいしいものを食べながら、それぞれが料理と合わせて楽しめるようなおいしいノンアルを作りたい」と考えたことがはじまりでした。
2022年のリリース時は、冷酒で飲む純米大吟醸をイメージした「水出し専用玄米茶」を発売。豊かなうま味や甘味をたっぷり含んだ、有機栽培の兵庫県産の酒米「山田錦」と、静岡県産一番摘み茶葉「春野茶」を使用しています。水出しにすることで、高温下で出てきてしまう「苦味・渋味」を抑え、「うま味・甘味」を中心に引き出したそうです。
今年は「熱燗でも楽しめるノンアル」と題し、新たに温かいお茶をリリース。熱燗で飲む純米酒をイメージし、熱いお湯で淹れてもうまみや甘みを豊かに感じられるように、棒ほうじ茶を使用しています。お湯出しと水出し、どちらでも楽しめる穏やかさが特長です。