イスラム教徒が国民の大半を占めるトルコ。イスラム教徒は毎年、イスラム暦の9月にあたる「ラマダン月」の1か月間は“斎戒(身を慎んだ生活)”が求められ、それが終わると「ラマダン・バイラム」と呼ばれる祭りが国全体でおこなわれます。別名「砂糖祭」とも呼ばれているこの祭り、一体どういったものなのか現地の文化や言語を紹介する「トルコ文化センター」(東京都港区)に詳しく聞いてみました。
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「国民の大半がムスリム(イスラム教徒)であるトルコでは、ラマダンは生活に根付いています。ラマダン月におこなわれる断食はムスリムの健康な成人であれば義務とされており、期間中は日中の飲食や喫煙なども禁止されます。さらに喧嘩やウソ、悪口など罪とみなされる行いも避けて過ごす必要があります」(トルコ文化センター)
ラマダン月が終わるとラマダン・バイラムが始まります。9月(イスラム曆)にあたる“ラマダン”と宗教的な祝日を意味する“バイラム”を合わせた言葉であるラマダン・バイラムは、イスラム教において大切な行事だといいます。ムスリムはアッラー(イスラム教における神)への感謝をささげ、家族や親せき・友人の家を訪問しあって親交を深めます。トルコ文化センターいわく、「お祭りといっても、日本のように出店やパーティーを開くことはありません。親しい人々の家を訪問しあうのが伝統的な過ごし方です。別々の場所で暮らしている家族がこの時期には一斉に帰省して一緒に過ごすので、どちらかというとお盆・正月に近いかもしれない」とのこと。
ラマダン・バイラムはラマダン月が明けた翌月の1日から3日間にわたっておこなわれます。期間中は各家庭で事前に甘い菓子を用意し、来客者にふるまいます。地域によって異なりますが、激甘スイーツ「バクラヴァ」や軽食パイ「ボレキ」が多いのだとか。ちなみに、日中の断食が課せられるララマダン月の間は「ラマダン・パケット」と呼ばれる食べ物の詰め合わせを贈り合うこともあるそう。
ほかにも、ラマダンに関する有名な食べ物はいくつかあります。
【ギュルラッチ(gullac)】ラマダン期間によく食べられるデザート。砂糖と牛乳を混ぜたものをかけたミルフィーユのような菓子で、ラマダン期間に店頭に並ぶ。
【ラマダン・ピデ(Ramazan pidesi)】ラマダン期間だけ店頭に並ぶ、ピザのような形をした特別なパン。最近は自宅用・寄付用と2枚求める人もいる。寄付用ピデは店内にある容器に集められ、欲しい人はそこから自由に取ることができる。
【デーツ】干したナツメヤシの果実。強い甘味が特徴。預言者が好んだとされており、断食明けに食べることが習慣として残っている。普段から食されているが、ラマダン中にはより多くの人が食べる。
街の商店ではチョコレート・飴・バクラヴァといった甘いものの売上が増えるなど、普段とは異なる状況が見られるのだとか。甘いものをたくさん食べるから「砂糖祭」というのでしょうか?
「スイーツが街中に溢れるから“砂糖祭”と呼ばれるのではありません。感謝を意味する言葉である『シュクル』が、長い年月を経て砂糖を意味する言葉の『シェケル』に変化し、いつしかシェケル・バイラム(砂糖祭)と呼ばれるようになったという説があります」(トルコ文化センター)
また、トルコの人々にとってラマダン(シェケル)・バイラムとはどういう意味があるのかについては、「1か月間の斎戒を終えた“喜び”の表現……と言えます。ラマダンは、欲望のままに生活する人々が『己の欲望を抑え心身を清める』という考えのもと行われています。ムスリム達にとって特別な時期を無事に終え、期間中の努力や神による恵みに感謝し人々と分かち合う。それこそがラマダン・バイラムの目的なのです」と教えてくれました。
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子どもたちがお菓子やお小遣いをもらって喜んだり、家族や親戚で集まる楽しい行事という一面も持つラマダン・バイラム。最近ではこの期間を利用してイベントが開かれたり、従来の習慣にのっとり「集まる」のではなく「遊びに出かける」人も。時代の変化や宗教的な意識の違いにより過ごし方は少しずつ変わりつつあるものの、根幹である「斎戒を終えたことへの喜び」「感謝を分かち合う」という意識は変わっていないようです。
(取材・文=つちだ四郎)
◆トルコ文化センター
住所
105-0012
東京都港区芝大門1丁目3-17 玉家ビル4階
電話番号:03-6452-9962
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