災害や再開発などで価値のある古い建物がどんどんなくなってしまっているなか、こうした建物を残そうとする動きが各地で見受けられる。神戸のモダン建築を一斉に公開するというイベント、「神戸モダン建築祭」の実行委員長を務める松原永季さんに話を聞いた。
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明治から戦前にかけて建てられた建築物を「近代建築」と呼び、戦後のものを「現代建築」と呼ぶ。「モダン建築」とはこれらの総称を指す。古い建物を一斉公開するというイベントは1980年代からヨーロッパを中心に世界各都市で開催されているそうで、関西圏では10年ほど前から「生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪」というものが開催されている。そして2022年からは「京都モダン建築祭」というイベントが開催されるようになった。
松原さんは開催の経緯について、「大阪・京都ときて『やはり神戸でもやらないといけない』という話になり、昨年から神戸で初めて開催するようになりました」と教えてくれた。神戸では居留地や港湾部だけでなく、全域にわたって様々なタイプのモダン建築が残っている。こうしたものを大事にしていきたいという気持ちが背景にはあるのだという。
開催時、松原さんの目に印象的だったのは、来場者の多くが所有者や管理者含むスタッフに感謝を述べていたこと。建物の価値を通じて様々な面で交流が生まれていったことで、建物の所有者や管理者の意識が少しずつ変わっていったということを目の当たりにしたという。建物の保存・活用をより裾野の広いものにしていきたいということで、今年も去年と同じような時期である11月後半あたりでの開催を予定している。
神戸には今まで公開されていなかったり、一部の研究者しか知らないような建物も多くあるそうだ。そうした建物も対象にしながら、公開できる範囲を広げていきたいと考えているという。
「都市のアイデンティティは建築を通じて伝えられる」と考えている松原さん。最後に、「多くの人々がその建物に対する記憶を残しておられるのではないかと思います。その記憶を継承して、多くの人々にきちんと伝えていくことができる……そんな仕組みやネットワークを作っていけたら」と締めくくった。
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「神戸モダン建築祭2024」は11月22日(金)~24日(日)の計3日間で開催。新たなエリアや参加建築を含め、ガイドツアーや連携企画など盛りだくさんのプログラムを予定しているとのこと。詳しくはオフィシャルページで確認できる。
※ラジオ関西『三上公也の朝は恋人』より