【橋本】 「ダバダ ディディ ダバダ ディダ」……沢田さんが歌えばどんな謎フレーズでもかっこいいですね。
【中将】 このフレーズの由来はわからないんですが、作詞を手がけたのは阿久悠さん。阿久悠さんは詞先のイメージがあるけど、曲先の曲もたくさん手がけておられて、『酒場でDABADA』もそうなんじゃないかと思いますね。イントロのギターなり、サビのメロディーを聴いた上で、そのフレーズを最大限活かすために「ダバダ ディディ」をはめたんじゃないかと想像します。
【橋本】 わかります。結果的に「ダバダ ディディ」がすごくフックになってますよね。
【中将】 ちなみに当時の子どもたちは替え歌で「沢田でんでん虫食べた」って歌ってたそうです(笑)。もっと下品なのもあるけど、ここでは控えておきます。
【橋本】 小学生の発想はすごいですね(笑)。でも、やっぱりヒット曲ってリスナーに想像してもらったりいじってもらえる要素が必要なんですよね。
【中将】 我々の耳には届いてこないけど『Bling-Bang-Bang-Born』ってブリブリ言っているから子どもたちによってとんでもない下ネタに替え歌されてる可能性もあるんだよね(笑)。さて、お届けする謎フレーズの名曲は次で最後になります。やしきたかじんさんで『砂の十字架』(1981)。映画『機動戦士ガンダム』の主題歌として作られた曲です。
【橋本】 「ライリー ライリー ライリー リラー」……登場キャラクターの名前かなんかだと思ってました(笑)。
【中将】 この謎フレーズにはけっこうないわくがあります。この曲は谷村新司さんが作ったんだけど、歌詞の内容にこだわるたかじんさんは「ライリー」の意味が理解できなくてレコーディングに苦悩します。たまらず谷村さんに電話して「あの『ライリー』の意味は何ですか?」と尋ねたんですが「民謡の合いの手『アラエッサッサー』『あーこりゃこりゃ』みたいなもんだ」と返され、ますます意味がわからなくなったと。結果、この曲はたかじんさんにとって初のヒット曲になったんだけど、後年まで「人生の汚点」とおっしゃって人前で歌うことはありませんでした。
【橋本】 たかじんさんらしい、すごいエピソードですね……。
【中将】 でも谷村さんがおっしゃるように、スキャットやヨーデルみたいに日本にも伝統的な謎フレーズって存在するんですよね。謎フレーズって人間の音楽文化が形作られる上で重要な要素なのかもしれません。その先に『Bling-Bang-Bang-Born』があると言うことですね。
(2024年7月12日放送回)