「子宮頸がんは初めて“人類が克服できる”がん。ワクチン接種を」 医師が大阪の医療大学で特別講義 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

「子宮頸がんは初めて“人類が克服できる”がん。ワクチン接種を」 医師が大阪の医療大学で特別講義

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 子宮頸がんを予防するHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの重要性と推奨の意義をテーマにした特別講義がこのほど大阪の森ノ宮医療大学(住之江区)で開かれた。講師の高橋孝幸医師(産婦人科)は、医療職を目指す同大の学生や教職員らを前に「子宮頸がんは、“初めて人類が克服できる”がん」と述べ、ワクチンの積極的な接種を訴えた。

特別講義の様子。高橋医師のレクチャーに学生らが熱心に耳を傾けた=2024年7月25日午後、森ノ宮医療大学「コスモホール」

 HPVワクチンは2013年4月、小学6年~高校1年の女子を対象に公費負担による定期接種がスタートしたが、重い副反応の報告が報道されたことなどにより、接種率は極端に低下。国は同年6月に積極的な接種勧奨を中止した。以来、約9年にわたり、接種するかどうかは事実上の自己判断となっていた。

 2022年、副反応と思われる症状と同ワクチンの因果関係が証明されなかったとして接種の積極的勧奨が再開。それとともに、接種の機会を逃した1997~2007年度生まれの女性が無料で受けられる「キャッチアップ接種」も実施されてきた。キャッチアップ接種は来年3月末が期限で、ワクチンの種類によっては間隔を開けての2~3回接種に約6カ月かかるスケジュールとなることから、今年9月末までに初回を受ける必要がある。

子宮頸がん予防(HPV)ワクチンの接種券と接種に関しての説明書
子宮頸がん予防(HPV)ワクチンの接種券と接種に関しての説明書

 講義の中で高橋医師は、▽1万人あたり132人が子宮頸がんになり、そのうちのほとんどが子宮摘出を含む手術療法や放射線治療、化学療法などの治療を必要とする▽子宮頸がんで亡くなる人は1万人あたり34人▽接種後、失神を含めた重い症状が発生するリスクは1万人中5人で、その後9割が回復する―というデータを挙げ、「ベネフィット(利益)がリスクを大きく上回る」と説明。子宮頸がんを引き起こすウイルスの大部分をHPVワクチンで防ぐことができるのに、日本女性の約半数が同ワクチンの存在自体を知らない実態を嘆いた。

 高橋医師は子宮頸がん予防を川の流れにたとえ、“病気の原因”が上流から流れてきたら、二次予防の早期発見・早期治療を目的とした「定期的な子宮頸がん検診」(中流)、三次予防の再発防止や社会復帰を目的とした「保健指導、リハビリテーション」(下流)も必要だが、もっとも重要なのは、一次予防である、そもそも「ワクチン接種によって罹患しないこと」(上流)と強調。ただ、ワクチンを受けても100パーセントの予防とまでは言い切れないため、「ワクチンと検診を組み合わせることが大事」とくり返し、「皆さんの周りにキャッチアップ接種の対象の方がいたら、ぜひ声を掛けてあげてほしい」と要望した。

高橋孝幸医師

 各国での子宮頸がんワクチンの接種状況も紹介。HPVは、中咽頭がんや陰茎がんなど男性がかかる病気の原因ともなるため、世界20か国以上で男性の公費接種が議論されていて、実際に公費で受けられる国もあるという。ワクチンや検診が普及したオーストラリアでは2028年に子宮頸がん自体が撲滅されると推定されている一方で、日本では接種率がほぼゼロになった期間があったため、国別の推計グラフを見ると、わが国の患者数だけが激増。高橋医師は「現状のままだと毎年5000人以上が亡くなってしまう。すぐに状況を変えることが大事。子宮頸がんは予防できる方法がある、初めて“人類が克服できる”がん」と力強く語った。

 講義の後半では、妻を子宮頸がんで亡くした男性のドキュメンタリー映像も上映。男性がコメントする姿や妻が亡くなる前に語る様子が映し出されると、目頭を押さえる聴講者もいた。

森ノ宮医療大学
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