かつての「部屋着」は夏祭りの「オシャレ着」へ なぜ? 浴衣事情の“いま・むかし”を専門家に聞く | ラジトピ ラジオ関西トピックス

かつての「部屋着」は夏祭りの「オシャレ着」へ  なぜ? 浴衣事情の“いま・むかし”を専門家に聞く

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 日本の花火大会や祭りで欠かせない文化の「浴衣」。ですが、近年の夏の酷暑を思うと「なぜわざわざ暑そうな浴衣を着るのか」と感じてしまう筆者。そもそも浴衣とは何なのでしょうか? なぜ夏祭りで着られるようになったのでしょうか? 浴衣文化の振興普及に努める日本ゆかた文化協会の代表・伴ともゆきさんに話を聞きました。

祭りの定番ウエアといえば「浴衣」

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 浴衣の誕生について伴さんによると、その起源は平安時代に遡ると言います。元は平安時代の貴族が蒸し風呂に入る際に、水蒸気でやけどしないように着たことから始まったそう。汗を吸い風通りが良いことから、のちに湯上がりに着られる着衣となり就寝時に寝間着として用いられるようになりました。この着衣は『湯帷子(ゆかたびら)』と呼ばれ、浴衣(ゆかた)の語源になっているのだとか。浴衣が暑そうというのは筆者の思い込みで、実は涼しい機能性の高い着衣であることがわかりました。

 さて、浴衣が屋外でも着用されるようになったのは江戸時代。「江戸時代後期に風呂屋が普及し、その頃から風呂には裸で入るようになりました。浴衣は現在のバスローブのように湯上がりの汗を拭き取るために着られ、そのまま風呂屋の2階など屋外で涼む人が増加。次第にそのまま外でも着られるようになり、下着から外出着へと用途を変えていったのです。また、そこから盆踊りや花見などに揃いの浴衣で出かけることが流行していったのです」と伴さん。

 夏の普及着として全国に定着していったのは明治時代に入ってからとのこと。しかしながら、当時の浴衣の位置づけは現代で言うところのパジャマや部屋着。あくまでも気軽に着る衣だったのだそう。オシャレで華やかさがあって、「気合いを入れて着る」「わざわざ着る」というような感覚は近代的に入ってからのものであると言います。伴さんいわく、「数十年前まで浴衣の着こなしといえば白や紺地の浴衣に灰色や茶色の帯を合わせるなど全体的に地味なイメージであり、現在のような派手なプリントの浴衣や華やかな帯はありませんでした」とのこと。

華やかでオシャレな浴衣は数十年前には存在していなかった

 ちなみに白地に紺色で描かれた古典模様の浴衣は『古典柄』、今風の鮮やかな彩りの浴衣は『ブランド浴衣』と総称されています。

「浴衣は洋服と違う歩き方をせねばなりませんし“着ること自体が面倒”という方も多いかもしれません。ですが最近は安価かつ着付けが簡単なものも多く販売されていますので、世代を問わず着て欲しいですしもっと普及が進めば良いと思っております」(伴さん)

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 機能性の高さと風情を合わせ持つことはもちろん、インバウンドの体験として外国人からの人気が高いアイテムである浴衣。着用者には特典があるなど、この夏、浴衣を推している飲食店や施設もちらほら。こうしたものをきっかけに、袖を通してみるのもいいかもしれません。

(取材・文=宮田智也)

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