サッカー・J1のヴィッセル神戸は、17日のJ1第27節で、ガンバ大阪との上位対決に2-2と引き分け。同日に勝利した首位・FC町田ゼルビア(勝点53)との勝点差は7に広がり、順位も5位に転落。悔しい勝点1になり、J1連覇を狙ううえで厳しい状況となってしまいました。それでも、この一戦では、これまで出番に恵まれなかった選手や、負傷離脱を経て復帰した選手の活躍が、希望の光にもなりました。その1人が、前半途中からピッチに立ち、好クロスで先制点を演出したMF飯野七聖選手です。
ヴィッセル3シーズン目、ガンバ戦前まではJ1リーグ戦10試合の出場にとどまっていた背番号2。今季2度目の先発となった第25節川崎フロンターレ戦では、1試合で2枚の警告を受けて、前半終了間際に無念の退場処分に。不遇のときが続いていましたが、ベンチ入りした今節、その悔しさを晴らす場面は、突然訪れました。
主軸のFW武藤嘉紀選手が、前半早々に接触プレーで負傷。交代を余儀なくされ、前半18分という早い段階で、飯野選手に出番がまわってきました。右サイドの攻撃的なポジションに入ると、同サイドの広瀬陸斗選手と連携をとりつつ、盛んに上下動を繰り返し、チームに活力をもたらします。
すると、前半の45+3分、飯野選手のプレーが均衡を破るきっかけに。自陣から飛び出し、右サイド敵陣でボールを受けると、マークに来た相手の一瞬の隙をついて好クロスを供給。これが、最後はエースFW大迫勇也選手のゴールにつながりました。
タフな戦いを強いられるなかでも、右サイドで奮闘を続けた飯野選手。チームが土壇場に同点弾を献上し、結果は悔しい引き分けに終わりましたが、今季もがき苦しんでいた右サイドのスペシャリストにとっては、今後への活路を見い出せるような試合になったと言えるでしょう。
試合後、報道陣の取材に応じた飯野選手は、この試合に至るまでの思いや、ガンバ戦の感想などを語りました。
「前々節はああいった形で退場してしまい、結果的にチームにすごく迷惑をかけてしまった。また、個人的にもやっとここで(出れると)いうなかで、ああいう形で終わってしまって、すごくふがいなさがあったというか、イライラもあったし、いろんな気持ちがあった」と、川崎F戦での退場からの日々を振り返った飯野選手。
それでも、「終わったことは終わったこと。次が大事だと思って、きょうの試合に出た」「プレーヤーは、試合でのミスは試合でしか取り返せない。毎試合、どの試合も、自分にムチを入れてやっている」というハードワーカーは、急きょやってきた出番にも即座に対応。
先制点の起点となった右クロスでは、ゴール前に入っていく味方の人数をしっかり把握。「大迫選手が後ろから走り込んでくるのが見えたので、彼が中に入ってきたほうがより怖さが出るなと思って、ひとつためて(からクロスをあげた)という感じ。1コ前にクロスをあげたとき、サコくん(大迫)に『俺を見ろ』と言われていたので、彼にあげれば一番得点の確率が高いし、あのシーンもサコくんが見えていたので、サコくんに(クロスを)あげた」と明かします。
今回の引き分けについては、「正直、いますぐ切り替えろというのは厳しいところもある。優勝争いをするなか、リードして、あの状況でラスト1分で決められるのは、絶対あってはならないこと。チームで要求し合わなきゃいけないことはあったと思う。次に、というよりは、しっかり反省するのが最初かなと思う」と本音も吐露。
ただ、復調の兆しを見せた飯野選手の存在は、チームにとっては大変心強いものであるのも確かなことです。
「最近やっと自分の形というか、特長をいかせる場所で、よりサイドでもらえるシーンが時々は出せるようになってきた。中断期間のトッテナム(ホットスパー)戦とスタッド・ランス戦で、自分のなかでいいイメージをつかめてはいたので、きょうもそういったイメージで試合に入ることができた」
「クロスの感触はいつもいいし、あれが僕の形」と、右からの高精度クロスに絶対的な自信を持つ、飯野選手。「いかに多く(右クロスのシーンを)作り出せるかが、チームの勝敗にもかかわってくること。それを考えながらいつもやっている」というように、ガンバ戦のような右クロスを供給し続けることが、彼にとっては、試合に出続けるための生命線となるでしょう。