神戸の春日野道に、今年創業70周年を迎える老舗の印刷会社があります。長きにわたる事業展開の中で守ってきた技術について、そして常に新しいことに挑戦し続ける姿勢について聞きました。
これまで「『水と空気以外なら何でも印刷できる』をモットーにシルク印刷業を営んできました」と話すのは、株式会社シンプロ(本社:神戸市中央区)代表取締役の湊恭太郎さんです。
“シルクスクリーン”とも呼ばれるシルク印刷とは、版の上からインクを押し付けて製品に印刷する、昔ながらの伝統的な技法です。この技法で、各種看板やゴム工業品への印刷、電車の運賃表や駅構内などの看板、百貨店のディスプレイなどの製作・施工も行っているのだそうです。
特に、ゴム製の工業品への印刷はこの技法が用いられているとのこと。例えば、車のボンネット内に取り付けられたファンベルトのベルトマークのロゴ印刷などがそれにあたります。
一方で湊さんは、「今までの技術などを大事にするのはもちろんですが、常に新しいことを追っていきたいです」とも。実際に、これまで“新しいこと”を取り入れてきた事例として、発売当時はビジネス目的ではほとんど活用されていなかったパソコン(初代Mac、1984年発売)を早々に導入。デジタル化に向けて取り組んだといいます。
3Dプリンターも、機器が出始めて「すぐに取り入れた」(湊さん)のだとか。結果的に直接の商品化にはつながりませんでしたが、金属3Dプリンターを所有する会社とタイアップして50センチほどの銅像を作成したり、ゴルフのパターを販売したりしたそうです。
湊さんは「創業当時からの技術・手法も大切にしながら、印刷業の可能性と、自社にしかできない独自性を常に追求していきたい」と、今後の展望を語って締めくくりました。
※ラジオ関西『谷五郎の笑って暮らそう』2024年8月25日放送回より
(取材・文=洲崎春花)