絵本のモデルは、神戸市兵庫区の中村翼さん(29)。
1995年1月17日 午前5時46分、翼さんの両親はマンションで激しい揺れに遭った。出産予定日が間近になっていた翼さんの母親の上に父親が覆いかぶさり守った。そして、近くの小学校の運動場に避難した。
厳しい寒さの中、母親が産気づいた。父親が車に乗せ病院へ向かおうとしたが、震災直後の混乱の中、大渋滞で進まなかった。その時、父親は交通整理中の警察官に涙ながらに「子どもが産まれそうなんです」と訴え、迂回路に誘導してもらった。病院に何とかたどり着いたが、停電で分娩室は機能していなかった。
父親と看護師が懐中電灯を照らし、その灯りの中、午後6時21分に翼さんは生まれた。
絵本では、震災発生から翼さんの誕生までのストーリーが綴られている。
「お父さんは、お母さんとおなかの中にいるぼくを必死で守ってくれたんだって」
「病院も地震で壊れて電気も水も止まった。お父さんは懐中電灯でお母さんを照らしていたんだって」
「夕方6時21分、ぼくはようやくうまれたんだって。お父さんもお母さんもたくさんたくさん泣いたらしいよ。うれしくて」
文体は翼さんによる一人称、「ぼく」が語るスタイル。
翼さんはのちに神戸学院大学で学ぶ。恩師の舩木伸江教授(現代社会学部・防災教育)が、「翼さん誕生までのストーリーをアトリエの子どもたちと一緒に、1.17を語り継ぐ絵本にしませんか」と、中嶋さんに話を持ちかけたのがプロジェクト誕生のきっかけだった。
クラウドファンディング・READYFOR「1.17 阪神淡路大震災を忘れない 震災の絵本プロジェクト」
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