女子サッカー・WEリーグのINAC神戸レオネッサで6年間にわたって社長をつとめ、9月末をもって退団する安本卓史氏が、9月30日、ラジオ番組にゲスト出演し、女子サッカーやINAC神戸への思いを述べました。
安本氏退団前最後の試合となった29日のWEリーグ第3節で、INAC神戸は、マイナビ仙台レディースとのアウェイ戦に1-0と勝利。安本氏も獲得に携わった選手の1人、今シーズンの新加入スペイン人MFカルラ・モレラ選手のゴールで先制すると、追加点こそなかったものの、加入後WEリーグ戦初出場となったU-20日本女子代表GK大熊茜選手を中心に守備ではクリーンシートを達成。チームは「やっさん」の愛称で親しまれる名物社長の有終の美を飾りました。
仙台戦については、「今季の強みでもある外国人選手の活躍でゴールを奪って(勝った)。これまでとは違う魅力のチームになってきている」と胸を張った安本氏。志半ば、WEリーグ4季目開始直後での退団になり、「INACを離れるのは少しさびしいし、残念な気持ちもある」と本音も吐露。
それでも「十分戦えるチームを今年はつくっているので、今シーズンは心配ないと言い切らせていただきます」と、安本氏の置き土産ともいえる新チームの今後に期待を寄せるとともに、「ただ、選手たちは、シーズンはこれからやから、がんばってや!」とエールを送っていました。また、ファン・サポーターには「ぜひ信じて、選手たちを応援してあげてください」と、さらなる後押しを呼びかけていました。
退団発表後の最近アウェイ3試合では、2連覇中の三菱重工浦和レッズレディース・楠瀬直木監督をはじめ、対戦相手の監督・社長や、高校女子サッカー指導者らからも労をねぎらわれたそう。仙台戦後には、INAC神戸サポーターから花束やプレゼントが送られただけでなく、マイナビ仙台のサポーターからも感謝のメッセージ幕も掲げられ、感激の様子だった安本氏。チームからはSPECIAL THANKSという文字とともに、選手全員が手書きのメッセージを寄せたユニフォームも贈られれば、ピッチでは胴上げもされ、「いい景色を見て終われるというのは、すごく幸せ者」と、オンエアのなかで感慨深げにコメント。
INAC神戸に携わった6年間については、「あっという間だった」という安本氏。営業・事業面でいろいろな企画を打ち出したりするだけでなく、自らスタジアムDJを担ったり、場内FMなどで試合を盛り上げたりと試合運営でも奮闘。さらに近年は強化にも携わり、まさにマルチロールに役割をこなしていたアイデアマンは、「ほとんど休みなし」で、INAC神戸発展のために奔走。苦難も多くあったようですが、そのなかで、「子どもの成長と自分の仕事がリンクできる仕事をさせていただいて、それがすごいありがたかった」と、同時期に女子サッカーを始めた2人の子どもを含めた家族の存在は大きかったといいます。
娘さんからは「これから仕事はどうするの?」と言われたそうですが、現状については、「ありがたいことに、びっくりするくらい、いろんなところから声をかけていただいている。今は(オファーされる)選手の気持ちがわかる。こんなことは初めて」と、次の道は熟慮中とのこと。これまで業務にまい進し続けてきたこともあって、「10月は、引継ぎのお手伝いもしますが、ちょっと家族のため、自分のために使う1か月にしたい」と述べていました。
番組中には、トップチームだけではなく、アカデミーのこともおもんぱかり、自らの企画の1つであるポストペイシステム「Shall WE Pay?」についても言及した安本氏。「2種も、3種も、4種も、女子サッカーにこれからもなんらかの形で関わっていきたい」「INAC神戸を通じて、女子サッカーの魅力というのは十二分に理解していますし、僕のなかだけで留めるのではなく、それをいかに伝えていくか。(女子サッカーは)おもしろいんですよ!」と、今後も女子サッカーの魅力の担い手、伝え手であり続ける意志を示していました。