大阪で金属製品の製造・販売を行う会社が、主力商品であるフライパンで、面白い取り組みを行っています。それはフライパンの持ち手に、野球のバットのグリップを使っていることです。
八尾市の藤田金属株式会社は、20人ほどの小さな会社ながら、鉄製のこだわりのフライパンをはじめ、金属加工した家庭用品を生み出し、国内だけでなく、いまや海外にも販路を広げている、注目の会社の1つです。
そのなかで、このたび同社の「持ち手がバットのグリップ」というフライパンが話題を集めています。スポーツメーカーのミズノの協力を得て生まれたというこの一品。作ったきっかけについて、同社の3代目、代表取締役社長の藤田盛一郎(ふじた・せいいちろう)さんは、次のように話します。
「木製のバットは、削っていく工程でふしができたり、中が割れてしまったりして、どうしても製品化できなくなったものが年間で何千本か出てくるそう。一部は箸(はし)やけん玉になるも、それでも(余りが)まだ消費しきれないのが現状で、そこでウチで何かできないかということで(バットに加工できなかった木を)引き取ったのがはじまりでした」
製品化できないバットの話を聞いた当時、「それならウチが全部引き取らせてください! それをフライパンの取っ手にできたらめちゃくちゃおもろい! 『野球で振れなかったバットを、料理で振ろう』というコンセプトでできるので、それをやりたい!」と名乗り出た、藤田さん。
今から1年前に、「持ち手がバットのグリップ」のフライパンの製造をスタート。「持ちやすさは本当に最高なんです! ミズノさんが(バット製造時に)持ちやすさを追求していただいている。後ろのグリップの部分が膨らんでいるので、(鍋を)振るのにもひっかかりがあり、それもめちゃめちゃいい」と、その出来栄えに胸を張っていました。
海外の展示会でも「持ち手がバットのグリップ」のフライパンは好評のようで、特に「アメリカ人にこのバットのフライパンはめちゃめちゃひきがいい」といいます。また、プロ野球・オリックスとコラボして、「実際の試合で使って折れたバットをアップサイクルしよう」という話も進んでいるそうです。
藤田さんは、「テニスグリップとか、いろんなことに応用できるのではと思う。また、全国でも(木を)伐採して捨てられるようなものなどがあれば、ご当地の(鍋用)グリップもできたらいいなと。そういったことで地域貢献にもなれば」と、さらなる構想も語っていました。
1951年に創業し、70年を超える歴史を持つ同社。リーマンショック後の2010年頃には一時、経営危機もあったそうですが、そういった苦境やコロナ禍などを、商品開発や販路開拓で乗り越えてきました。70周年を迎えた年に40歳で父から事業を継いだ、藤田さん。1980年生まれの松坂世代は、今後について「自分が70歳になる頃に会社も100周年を迎えるので、社員数20数名の町工場が世界を相手にどこまで戦えるのか挑戦したい」と、“八尾から世界へ”の思いをさらに強くしていました。
※ラジオ関西『としちゃん・大貴のええやんカー!やってみよう!!』2024年10月7日放送回より