世界的ムーブメントとなっている「SDGs」。日本でも動きが広がっているものの、具体的な関わり方や、何がSDGs達成につながるのかがわからない人もまだ大勢いるのではないだろうか。
個人だけでなく企業も同じだ。未だ、企業内に専門部署や専門家が少ない現状があるといい、脱炭素社会においては今年11月、国連の気候変動会議・COP29で、日本はG7を構成する他6か国とともに「化石賞」(気候変動対策に消極的な国に与えられる不名誉な賞)を、を受けることとなった。
サステナブル=持続可能な社会を築くためには、『わかりやすく、取り組みやすい具体的な指針』があれば行動しやすくなるだろう。そこで、2025年に開催される大阪・関西万博で、SDGs実現への方向性を決めようと取り組む団体もある。パビリオン『宴~UTAGE~』を出展する大阪外食産業協会(ORA)だ。今回は、この企画に関わりの深い企業のリーダー2人に詳しく聞いた。
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取材したのは、廃食用油の回収・リサイクル事業を展開する浜田化学(兵庫県尼崎市)代表取締役の岡野嘉市さんと、サスティナビリティコンサルティングを手掛ける合同会社波濤(大阪市北区)代表の玉木巧さん。
岡野さんは同パビリオンのSDGs部門を担当するにあたり「取り組みに“一本筋の通ったもの”が必要と感じた」という。そこで相談を持ち掛けた相手が玉木さんだった。玉木さんは「SDGsの取り組みにはルールがない。国連が決めているゴールなので、一企業が担うには無理がある」とし、「自社におけるサスティナビリティの定義を決めた上でゴールに向かっていくべきだ」と話す。
そもそもSDGsは2015年、翌16年から30年の15年間で達成すべき世界共通の目標として打ち出されたもの。しかし日本では現在も、過去の取り組みがSDGs17項目のどれに当てはまるか、紐付ける作業から始める企業が増えてきている段階なのだそう。玉木さんは「今までの取り組みの紐付けだけでは解決できない。『未来に向けてどう解決していくか』という本質が大切」と話した。
SDGsへの前進を目指し、同パビリオンでは目標設定を行って、まず今の立ち位置を把握する活動に乗り出す。岡野さんは、「未来のゴールに向かっていける仕組みができているかどうか。食品業界全体の底上げを図る」と先を見据えた。
“一本筋の通った指針”を作るため、農林水産省のガイドラインを元に外食産業専門のチェックシートの作成にも着手している。今回は6つのテーマ(1)温室効果ガス削減(2)食品廃棄(3)脱プラスチック(4)水(5)人権(6)健康と栄養を取り上げるという。
玉木さんは、「このチェックシートを1年に1回の頻度で回収。成績優秀な企業などへの表彰制度を設けようと考えている。先ずはトップランナーとなる企業を生み出す」とした上で、「どのように(成果を)伸ばしたのかを知ることが他企業のインプットにつながり、広がりを作っていけると考えている」と狙いを語った。加えて「『サスティナビリティ』は、一企業で全て行う必要はない。企業は利益追求も大切。SDGs17項目の中から(自社が)利益が出せる項目を“選択”することと“集中”が必要」と説いた。
大企業と中小企業では取り組みに対するリソースは限られてしまう。しかしそのような中でも、可能な選択肢を明確にして活動する企業は結果を生んでいるという。1つでも2つでも、企業にメリットをもたらす無理のない施策を見極めて取り組み続けることが、本当の意味での“持続可能な社会”につながるのではないだろうか。
※ラジオ関西『地球にいいこと』より