スーパーの納豆のコーナーには、大粒・小粒の他に「ひきわり納豆」が売られています。関西在住の筆者は手に取ったことがないですが、全国的に市販される納豆に占めるひきわり納豆の割合は7〜8%である一方で、東北地方の一部では40%前後と高めのシェアを誇っているとのこと。
ひきわり納豆を製造する『ヤマダフーズ』(本社:秋田県)によると、秋田ではひきわり納豆が好まれスーパーでも豊富に並んでおり、同じ東北エリアだと青森県でも愛されているそう。
さて、ひきわり納豆とは「普通の納豆を細かく刻んだもの」だと思っていた筆者、これはどうやら違うようなのです。
「ひきわり納豆は完熟した大豆をひき臼などで細かく砕き、皮を取り除いたものを発酵させています。既に割られた大豆を仕入れて作っている会社も多いですが、当社では大豆についている土やホコリを取り除き、研磨機できれいに磨いて乾燥させたあと割るという原材処理から行っております」(ヤマダフーズ)
同社ではひきわりの度合い別に2つの製品を製造。中粒大豆を約6〜8等分に割ったサイズの「ひきわり」、約15等分とさらに大豆を細かく割った「きざみ」です。きざみは、ひきわりを食べる習慣の少ない地域でも離乳食や子ども向けとして購入されているようです。
驚くべきことに、ひきわり納豆は通常の納豆と比べると栄養素に違いがあるのだとか。管理栄養士の野口知恵さんは「日本食品標準成分表では、『糸引き納豆』と『ひきわり納豆』で分けられており、皮を取り除くことや、表面積が違うことでそれぞれ含まれる栄養素が変わってきます」と話します。
野口さんによると、糸引き納豆に比べてひきわり納豆はビタミンEとビタミンKが1.5倍ほど多くなっているのだそう。ビタミンEは脂質の酸化を防ぐ効果があり、油物を好む方におすすめできます。また、血行を良くするので冷え性の人にも効果が期待できるとのこと。
「いずれも脂溶性ビタミンなので、アマニ油やオリーブ油と一緒に摂取するのもおすすめです。また、ビタミンKは骨のカルシウムを流失しにくくする効果があるので、海藻類やジャコなどと一緒に食べると良いでしょう」(野口さん)
糸引き納豆はというと、ひきわり納豆よりもカルシウムやマグネシウム・鉄・亜鉛などの含有量が優れているそう。自身の摂りたい栄養に合わせて食べ分けるのも良さそうです。
「栄養豊富でヘルシー」というイメージの強い納豆ですが、ひきわり・糸引きに関わらず“食べ過ぎ”には注意が必要とのこと。野口さんいわく「悪玉菌を減らし腸内環境を整える効果のある納豆ですが、推奨は1日1パックです。納豆菌は摂取しすぎると腹痛や吐き気を催してしまう可能性があります。また、抗凝固薬や抗血板薬を使用している方はその作用を減少させる可能性もあり注意が必要」とのこと。
また「時間栄養学」の観点から、納豆は朝より夜の方がそれぞれの栄養の定着が良いことが最近の調査でわかってきたそう。「納豆を食べるなら夕食がおすすめです」と野口さんは締めくくりました。
(取材・文=宮田智也)