がれきの山となった街を復興させるために、励まし合いながら乗り越えた人々の姿が、今の暮らしにつながっているのだと思うと、「私たち(震災を知らない)世代、経験した世代に任せるだけでいいのだろうか」と思うようになった。
震災を経験した人々が「語り部」として発信することで、榎本さんは被災地の歴史を知った。
昨年(2024年)夏、神戸市の「人と防災未来センター」へ出向き、職員や震災語り部が、どのような思いで震災と向き合い、後世に伝えているのかを聞いた。
「今を大切にしてほしい」という言葉が忘れられない。大震災を経験したからこそ出てきた言葉。
どれだけ悲惨な思いがしたのかと思うと、息が詰まる思いだった。
「遠い過去の出来事」としか受け止められなかった阪神・淡路大震災。
映像から伝わる倒壊家屋やがれきの山を見ても実感が湧かず、ただ「怖い」と感じるだけだった。しかし、大学生になって初めて、それが自分の住む街で起きた現実であり、決して過去の出来事ではないことに気づかされた。
そして、自分が知らなかった、被災者の痛みや喪失感が、“この街”に埋もれていることに気付き、改めて震災を知らない世代としてどう生きるべきかを考えさせられた。
中学1年の時、大阪北部地震が起きた。午前8時すぎ、すでに登校し、すぐそばにあった大きなホワイトボードに貼り付いていたものが全て落ち、床に散らばった。その時は何が起こっているのかがわからなかったが、その直後、大きな揺れと共に「しゃがんで!」と先生が職員室から大声を出して飛び出してきたのを鮮明に覚えている。
その時、「南海トラフ巨大地震が来たのか」と思った。今まで経験したことのない揺れ、恐怖で言葉が出なかった。