季節を問わず、冷蔵庫に常備する家庭も多い身近な根菜「ニンジン」。サラダやスムージー、スープなど、さまざまな調理方法で手軽に取り入れることができる食材の一つとして重宝されています。また栄養面でも、視力や皮ふの健康、腸内環境の改善など、私たちの体に多くの健康効果をもたらすとされています。
そんなニンジンを調理する際には皮をむく人もいると思いますが、スーパーなどで見かけるニンジンの多くは、じつはすでに“皮がむけた”状態であることをご存知でしょうか。だとすれば私たちが皮だと思っていたものは、いったい何なのでしょう? 兵庫県北部農業技術センターの木下歩さんに取材しました。
ーー私たちが普段購入しているニンジンのほとんどは、すでに皮がむけているという話を耳にしました。本当なのでしょうか。
【木下さん】 おおむねその通りです。外部から植物を保護する役割を持つ皮の部分は、出荷前の洗浄によりほとんどがむけてしまっています。ただし、直売所などで購入される土付き(=未洗浄)のニンジンには皮がついています。
ーーなぜ、スーパーなどに出荷されるニンジンの皮はむけているのでしょうか。
【木下さん】 ニンジンなどの農作物は収穫後、出荷前に「調製」という工程を経ます。ニンジンは調製で水を張った洗浄槽に入れられ、泥が落とされます。この時、ニンジン同士がこすれ合うことで土が取れるのですが、皮は非常に薄いため、土と一緒に取れてしまうことが多いんです。
ーーそれでは、私たちが“皮”と思っている部分の正体は何なのでしょうか。
【木下さん】 表面が空気に触れて固くなった部分です。輪切りにすると芯の部分が見えると思いますが、それより外側の部分が表面に出ている状態ですね。栄養価は一般的に食べられている根の部分と同じです。