人々の暮らしを支えるライフラインのなかでも、環境に優しく災害に強いとして改めて注目を浴びている「LPガス」。兵庫県の南西部に位置する相生市、赤穂市、上郡町、佐用町では、エリア内の大部分を占める約3万世帯がメインエネルギーとして利用しています。
同地域のLPガス環境を管轄している、兵庫県LPガス協会・西播西支部副支部長の千種和英さんによると、同支部では2014(平成26)年に、エリア内の全市町と「災害時におけるLPガス等支援協力に関する協定書」を締結。毎年夏に保安講習会を開催しているほか、現在は所管警察署との見守り協定に沿った取り組みも推進中です。
同支部が事業所を構える佐用町では、2009(平成21)年8月の台風9号に伴う水害で甚大な被害が発生しました。同町における観測史上最大の豪雨となり、死者18人、行方不明者2人という被害が出ました。さらに、町内全域が浸水し1700戸以上の家屋に影響を及ぼしました。
被災したその日、千種さんは、1995(平成7)年の阪神・淡路大震災で甚大な被害を被った神戸・新長田の商店街の仲間とともに、神戸で開催されていた震災復興関連会議に参加していました。連絡を受けて佐用町に戻ったものの、浸水により深夜まで町内に入ることさえ叶わなかったといいます。
深夜になって水が少し引き、ようやく町に入ることができた千種さん。町の惨状を目の当たりにし、「LPガスに関する2次被害を出してはいけない」と強く感じたそう。
それは、水害ならではの光景でした。浸水した場所でLPガスのボンベが浮いて倒れてしまっていたのです。LPガスのボンベは鉄でできており、中にガスが入っているものの水と比べると重量が軽いためでした。そこで千種さんは、ガスの流出がないか、深夜から朝にかけて懐中電灯を片手に町内全域を見てまわったといいます。
千種さんらはその後、佐用町での水害の経験と教訓を生かし、能登を含めた全国各地の被災地に出向いてさまざまな支援活動に取り組んでいます。
2011(平成23)年に発生した東日本大震災では、3月11日の発災直後にひょうごボランタリープラザ(神戸市中央区)から「(被災地に)温かい料理を届けてほしい」との依頼を受け、同月23日には岩手県宮古市を訪れて炊き出しを実施しました。
翌4月には宮城県の南三陸町へ救援物資としてガスボンベとプロパンガス用のコンロを持参、炊き出しも行いました。千種さんは「とても喜んでもらえました」と当時を振り返りました。
阪神・淡路大震災から30年。「あっという間だった気がするが、この30年の間に全国各地で頻繁に災害が発生してきた」と話す千種さん。「いつ・どこで・誰が被災するかわからない状況。ガスの事業者として、そして地域住民のひとりとして、市町と連携しながら住民の安心・安全を守る役割を担っていく存在でありたい」と強い意志を持って語りました。
※ラジオ関西『歌声は風にのってブランチ』より