あえて兵庫・姫路で“いちご栽培”する香川県の会社 その理由とは? 代表「“人生最期の一口“作る」 | ラジトピ ラジオ関西トピックス

あえて兵庫・姫路で“いちご栽培”する香川県の会社 その理由とは? 代表「“人生最期の一口“作る」

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 冬から春に向けて旬を迎える果物「いちご」。実は兵庫県産のいちごが県内の市場に出回ることは少ないそうですが、香川県東かがわ市に拠点を置く空浮合同会社は姫路に農園を設置し、“兵庫県内の流通”を目的に「空浮(そらうき)いちご」というブランドいちごの生産に力を入れています。農園設立の経緯やこれからの展望について、同社の代表社員・大山隆さんに話を聞きました。

姫路市西脇の空浮ストロベリーガーデン 提供:空浮合同会社
姫路市西脇の空浮ストロベリーガーデン(提供:空浮合同会社)

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「実は、もともと東京でヘアメイクの仕事をしていたんです」と大山さん。激しい競争社会の中で限界を感じ、第二の人生をスタートさせることを決めたといいます。「次の人生でも、ものづくりに携わりたい」という思いがあったため、当時の農業ブームも相まって両親の故郷である香川県東かがわ市で農業を始めることに。

「数ある品目の中からいちごを栽培することに決め、まずは農園にビニールハウスを建てるところからスタートしました。ほぼ一人での作業で、時間もかなりかかりましたね」(大山さん)

 過酷な状況でありながらも、着々と苺作りを進めていった大山さんの周りには次第に仲間が増え、事業は拡大していきます。そんな時、取引先から「兵庫県産のいちごを作ってほしい」と依頼があったのだそう。

「挑戦してみたいか?」……大山さんは、まず社内のスタッフに尋ねてみました。すると「香川県から兵庫県へ転勤してチャレンジしてみたい」という前向きな返答が。「その後様々な機関へ相談。多くの方の力添えもあり、姫路農園開園の実現に繋がりました」と大山さんは当時を振り返ります。

 こうした背景により、設立されたのが姫路農園です。大山さんは「兵庫県でつくるのだから、せっかくなら兵庫県のオリジナル品種に挑戦してみよう」と考え、同園では“あまクイーン”という品種を栽培しています。

姫路市西脇の空浮ストロベリーガーデン 提供:空浮合同会社
姫路市西脇の空浮ストロベリーガーデン(提供:空浮合同会社)

 海のミネラルを豊富に含み、低温度管理のもと栽培されたあまクイーンは、実も大きく豊かな香りと甘酸っぱさが魅力。地面から離れた栽培ベッドで育てる“高設栽培”の様子はまるで苺が宙に浮いているように見えることから、大山さんはブランド名を「空浮いちご」と付けました。

「人生の最後に食べたくなるほどのおいしさとは……と考えた末、『人生最後の一口を作る』というコンセプトにたどり着きました」(大山さん)

苺栽培の様子 提供:空浮合同会社
苺栽培の様子(提供:空浮合同会社)

 農業の担い手不足や高齢化が叫ばれる中、姫路農園設立にあたり雇用面での不安はなかったかとの問いかけに、「現在(2024年10月時点)では、32名の正社員が在籍しており、平均年齢は27.6歳です。姫路市は人口規模が50〜60万人程度で、この規模であれば雇用の確保が可能ではないかと判断しました。その結果、概ね必要な人材を集めることができています」と大山さんは回答。

 番組パーソナリティの清元秀泰姫路市長は「人生最後の一口を届けたいという、苺作りへの想いに感動しました。病院に勤めていた頃『最期の食事に季節の果物であるいちごを食べたい』という方が多かったことを思い出します。企業としてそれを目標とされていることが、若い方たちにとってもやりがいを感じる部分なのではないかと思います」とコメント。

「売上やキロ単価など、何かしらの指標で日本一を達成できる会社にしていきたい。それが従業員の働きがいにも繋がると思うんです」と大山さんは今後の目標を語り、締めくくりました。

(取材・文=洲崎春花)

※ラジオ関西『ヒメトピ558(ゴーゴーエイト)』2025年1月17日、24日放送回より

写真中央:空浮合同会社の代表社員 大山隆さん 左:番組パーソナリティの清元秀泰姫路市長 右:ナビゲーターの洲崎春花
写真中央:空浮合同会社の代表社員 大山隆さん、左:番組パーソナリティの清元秀泰姫路市長、右:ナビゲーターの洲崎春花
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