【橋本】 お洒落な怒りソングですね!
【中将】 東京で生まれ育った佐野さんにとって、東京をキラキラ描く当時のニューミュージックやシティポップは違和感があったそうです。この曲はサウンドこそお洒落で洗練されてるんだけど、メッセージには「何か欺まん的じゃない、翳(かげ)りのある、それでいてスピード感のある」音楽を追求していた佐野さんの怒りが込められているんですね。
【橋本】 東京と言えばキラキラの最前線みたいなイメージだけど、外から見るのと中で育つのとでは全然違ったのでしょうか。どんな環境でも生きづらさや寂しさってあるものなんですね……。
【中将】 そうですね。そして佐野さんのルーツであるR&Bやロックンロールってそういう生きづらさを歌うものが多いですね。それだけじゃなく、HIP HOPにしてもレゲエにしても演歌にしても、社会への怒りを音楽に乗せたのが始まりだから、今の日本みたいに怒りがなくなってしまうと音楽カルチャー自体が衰退しちゃうんじゃないかと心配になります。
【橋本】 私はかっこいい音楽、いい曲を聴くと怒りがわいてきます。「くそー! 悔しい!」って(笑)。
【中将】 (笑)。さて昭和の怒りソングも、次で最後となりました。中森明菜さんで『少女A』(1982)。セカンドシングルにして明菜さんのイメージを決定づけた名曲です。
【橋本】 やっぱり女の子も怒ってますよね! それにしても明菜さんにぴったり!
【中将】 1980年代は少年非行の全盛期で、若者の間で不良っぽいカルチャーが流行っていました。親や先生や反抗するツッパリみたいなのがカッコいいという価値観があったんだけど、最近の10代とかだと理解できないかもしれないですね。
【橋本】 と、私も思っていったんですが、この間、地元・兵庫県川西市の成人式で歌を歌わせていただいた時、すっごい悪そうな服着て騒いでる若者がたくさんいました(笑)。社会に怒りを持ってるかどうかはわかりませんが……。
【中将】 まだそんなわかりやすい不良が! ぜひ彼らに社会への怒りをもっと表現していほしいですね(笑)。






