平安時代から現代まで約1000年にわたり制作され続けてきた日本刀。その歴史を多彩な優品でたどる展覧会「―全日本刀匠会50周年記念―日本刀1000年の軌跡」が大阪歴史博物館(大阪市中央区)で開かれている。いにしえの名刀、現代刀匠の代表作、アニメとのコラボ作品など約80点が集結、刀剣ファンはもちろん初心者も楽しめる、魅惑の日本刀ワールドが広がる。5月26日(月)まで。


本年は国内最大の刀匠団体「全日本刀匠会」設立50周年にあたる。展覧会は節目の年を記念して開催。同会顧問の刀工・月山貞利さん(78)は「先輩たちが伝えてくれた日本刀の伝統技術、尊い歴史を私たちも継いでいく。常日頃からその責任と使命を感じている」と話す。

展覧会は4部構成。第1部「鎌倉から昭和前期」には、江戸時代中期の名工・井上真改の代表作「刀 銘 井上真改/(菊紋)延宝二二年八月日」(重要文化財、1676年)、変化に富んだ刃文が美しい「短刀 無銘 (名物 伏見正宗)」(同、鎌倉時代末期)、島津家から西郷家が拝領したと伝わる「太刀 額銘 雲次」(鎌倉時代末期~南北朝時代)など、名高い刀が並ぶ。
「刀匠の苦難」と題した第2部では、貞利さんの父で人間国宝の2代月山貞一さん(1907~1995年)がつくった包丁が初公開されている。第2次世界大戦後、刀剣制作が禁止され、多くの刀匠が廃業する中、貞一さんが技術維持のためにつくった作品。明るく冴えた刃文で、鉄の粒子が刃の全体にきらめいている。銘の「刀匠」には、刀剣制作者としての自負がにじむ。


第3部は全日本刀匠会の歴代会長による逸品、第4部は同会会員の代表的な作品を展示。興味深いのは、作者の思いが記されたキャプションだ。「我が娘のお守刀です(中略)将来この短刀を娘が手に取った時に、私の事を思い出してくれることを願います」「名刀が現代に伝わったように、私自身の作品も後世に残っていくことを願い、さらなる技術研鑽に努めながら自身の思い描く名刀へ挑戦して参ります」など、刀に込められた熱い気持ちがつづられている。いつの時代も刀匠たちが、自身の命が尽きた後も残る存在であることを意識しつつ、刀をつくり続けてきたことが分かる。





