兵庫県・上郡町。緑豊かなこの町の一角に、昭和の香りを今も残す喫茶店があります。創業から58年を迎えるというこの店は、地域にとってどのような存在なのでしょうか?
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店の主は沖和良さん。屋号を「喫茶ヨット」といいます。店名の由来は祖父である初代が、苗字である沖(おき)にちなんだのだとか。「海とは縁遠い立地だが、印象に残る名前にしよう」という思いが込められているのだそう。

創業当初から通い続ける常連客もおり、なかには親子2代、3代で訪れる人も。「長く続けてきたからこそ、地域とのつながりを実感します。ここがあることで、何か安心してもらえているのなら嬉しいですね」と沖さんは語ります。
近所に住む高齢のお客が多く、“もうひとつのリビング”さながらに過ごしているようです。「友達と顔を合わせておしゃべりすれば、自然と元気がわいてくる」という声もあり、同店は地域にとって憩いの場・心の拠り所でもあるのです。

3代目となる和良さんは、約20年前に家業を継ぐ決意をして上郡に戻ってきました。以前は飲食業とは無縁の仕事に就いており、その頃に趣味で作っていたカレーに魅了されたという背景もあり、店の移転を機に伝統的な純喫茶スタイルに「スパイスカレー」という新風を取り入れました。
当時としては珍しかったスパイスカレー。「ここでしか食べられない味」として話題を呼びます。メニューはシンプルにチキンカレーのみ。味わいへのこだわりは深く、インドやアジア各地を旅してスパイスを研究し、現地の味に触れた経験がそのベースになっているのだそう。

ほかにも上郡町の特産品であるモロヘイヤを使用したメニュー、サンドイッチやプリンアラモードといった“レトロ喫茶メニュー”も味わえます。

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いまや小学生たちが地域学習の一環で訪れるようになった同店。地元に根付いたカルチャーが次の世代へと自然にバトンリレーされる……こうしたことは、昨今各地が積極的に取り組む「まちづくり」の参考にもなりそうです。
(取材・文=洲崎春花)
※ラジオ関西『谷五郎の笑って暮らそう』2025年5月25日放送分より




