「世界に隠された20の悲劇」。
ありきたりの日常生活、とても楽しそうな雰囲気なのに、目を凝らすと、とても悲しく、ショッキングなシーンが飛び込んでくる。


国連開発計画(UNDP)が作成した絵画のタペストリーだ。カラフルで明るく描かれた人々の営みの中に、爆撃を受ける工場、バスで人々が連れ去られる様子が描かれている。


展示されたのは、映画監督の河瀬直美氏(※)が手がける大阪・関西万博のシグネチャーパビリオン『Dialoge Theater一いのちのあかし一』。
6月15日、国連パビリオンと吉本興業が開催した『Walk the Talk for SDGs in EXPO2025 UN&YOSHIMOTO』のスペシャルトークセッションとして開かれた。


河瀬監督がプロデュースするパビリオン「Dialoge Theater」では、「どうして私たちは、わかりあえないと思ってしまうのだろう。敵と味方に分かれてしまうのだろう」というメッセージを発信する。
日常生活で失われつつあるとされる“対話”を通じて、世界中で起きる“分断”を明らかにし、解決に向けて何が必要なのかを考える、メッセージ性の強いパビリオン。“没入感”や“ビジュアル”に訴えかける、現代の万博における典型的なアプローチとは異なる。


作品『世界に隠された20の悲劇』はタテ約4メートル、ヨコ約5メートルのボードに描かれたタペストリーで、戦争・紛争の長期化、人身売買、学校でのいじめなど20種類の課題について問題提起している。
トークセッションの会場となった「森の集会所」は、奈良県十津川村の旧折立(おりたち)中学校の木造校舎を移築し、開放的な空間にアレンジした。
廃校後、里山で朽ちていくような校舎を、記憶ごと移築した。





