兵庫陶芸美術館（兵庫県丹波篠山市）では、開催中の大阪・関西万博に合わせ、博覧会が盛んに行われた明治期に兵庫県内で作られた輸出陶磁にスポットを当てた特別展「博覧会の時代 HYOGO発、明治の輸出陶磁」が開かれている。今展の「リモート・ミュージアム・トーク」第２回も同館学芸員の村上ふみさんが見どころなどを紹介する。タイトルは「明治の高い技術に触れる」。
☆☆☆☆☆
兵庫陶芸美術館では、2025年８月24日（日）まで、特別展「博覧会の時代 HYOGO発、明治の輸出陶磁」を開催しています。明治期は、万国博覧会や国内で開催された博覧会への出品、輸出が大いに奨励され、重要輸出品のひとつとして陶磁器製造が殖産興業とも深く結びついた時代です。兵庫県内でもこの潮流に乗り、海外を指向した陶磁器が焼かれました。本展では、兵庫から世界を目指した、豪華で美しいやきものを紹介します。
明治の工芸品は近年その技術の高さからも注目を集めています。器面に竹細工のような籠目模様を施し、立体的に表現された菊など、様々な草花をのぞかせた製品は目を引きます。一方、小さな花瓶に多彩な色絵の具と豪華な金彩を使って、細かく模様を描きこんだ神戸絵付はまさに超絶技巧です。
また明治期は、やきもの作りに西洋の技術が取り入れられ、表現の幅も広がりました。鮮やかな色合いの絵の具を使い、着物をまとった武者や婦人などの日本らしい図柄や、東洋的な山水、草花、釉下彩（ゆうかさい）の技術を使った写実的な意匠が盛んに描かれました。これらの華やかな製品によって、海外に向けて陶磁器が盛んに作られた当時の息吹を感じてください。
出石陶磁器試験所と出石改良陶磁器株式会社の作品です。1899年、金沢から友田安清を指導者として迎え、設置された陶磁器試験所と、1902年に試験所に併設された改良陶磁器株式会社では、技術改良によって「雪よりも白い」という白磁の素地が作られ、新たに釉下彩の技術も導入、製品作りが行われました。
神戸絵付による花瓶を2つ紹介します。1つは、びっしりと蝶を描き込んだもの。一対からなる、高さ11センチの小さな花瓶です。当時の職人の技術と精神性の一端を垣間見ることができます。もう1つは「司山《色絵金彩花童子図花瓶》」で、表面に生き生きとした子どもの姿が描かれています。子どもが持つ赤い旗には「神戸市布引瀧道長江司山」との文字が見えます。神戸絵付には、このような製作所や地名を入れた隠し銘がたびたび見られます。本作も高さは約13センチと小ぶりです。
