神戸市兵庫区出身の日本画家・西田眞人が、阪神・淡路大震災直後の神戸の街並みを描いた作品などを集めた特別展「西田眞人 日本画展 -再生の祈りをこめてー」が、神戸ゆかりの美術館(神戸市東灘区)で開催されている。2025年9月15日(月・祝)まで。

「震災関連の作品を中心に初期から最新の作品まで、画家の画業を一望できる展覧会です」と、神戸ゆかりの美術館・岡泰正館長は話す。

1952年、神戸市兵庫区に生まれた西田眞人は、京都市立芸術大学美術学部日本画科を卒業後、兵庫県内の高校で教壇に立ちながら、数々の受賞を重ね声価を高めていった。
1995年に阪神・淡路大震災が発生。西田は神戸の画家としての使命感に突き動かされて、倒壊し廃墟となった神戸の街をスケッチし、作品に仕上げた。火災に見舞われた長田を描いた『黒いアーケード』は、まだ焼け跡が生々しく残った「菅原市場」の震災1か月後の姿。自身が高校時代に利用していた市電が近くを通っていて、なじみのある場所だった。その場所は変わり果てた姿になり、衝撃を受けた。西田は早朝、「隠れるようにして」スケッチしていた。そこへ人が近づいてきた。「怒られるのかと思ったが、『こういうことも大事やね、頑張ってね』と励まされた」という。

震災が起こる前も、鉄サビを帯びて朽ちていくものを題材にすることが多かった西田。被災後の神戸の街を「残さないといけない」と涙を流すように絵を描いた。日本画は洋画のように見たものをそのままに描くのではなく、スケッチ、小下絵、下絵、本画と冷静な造形的手順を経て作られる。「洋画の再現性と日本画の意匠的要素を融合させ、ひどい状況を俳句や和歌のように詩的にとらえ芸術とする。(震災後の神戸を描いた)作品は見る人に辛いことを思い出させるかもしれないが、心に残る作品群だ」と岡館長は解説する。

『黒いアーケード』と並んで展示されているのが『光のアーケード』。震災があった年、1995年の12月に、犠牲者の鎮魂を込めて開催された神戸ルミナリエが題材となっている。この2点は同じ構図、遠近法で描かれており、「光」で溢れる景色は神戸の復興を表している。岡館長は、震災を描いた作品にはなかった人が描かれているとした上で、「この2つの作品が並ぶことは展覧会ならでは」と話す。またこの2点の間には、多聞寺(神戸市垂水区)の仏様を描いた『阿弥陀』も展示され、神戸の街を見守るような配置になっている。






