

演奏されたのはモーツァルト「ディヴェルティメント」、ヤナーチェク 「弦楽のための組曲」、ドヴォルザーク「ユーモレスク」、「交響曲第9番“新世界より”ラルゴ(第2楽章)」などが演奏され、感動した聴衆の拍手は止まず、スタンディングオベーションに包まれた。


コンサートを終え、チェコ放送交響楽団のコンサートマスター、ヴラスティミル・コブルレ氏がラジオ関西のインタビューに応じた。
まず、「日本の皆さんが、チェコという国だけでなくチェコの音楽をどれほど愛しているかを実感できた。日本で演奏できることに喜びを感じる。何度も来日しているが、大阪・シンフォニーホール、東京・サントリーホールといった都市部のみならず、地方でも素晴らしいホールがあり、観客のマナーも素晴らしい。真摯に音楽を受け止めてくれる。チェコと日本は距離的にとても遠い。だからこそ深い感情を込めて“心の距離”を近づけようと、日本の皆さんにとってなじみのある曲をチョイスしている」と話した。

ヴラスティミル氏にとって不思議に思うことがある。「私たちチェコでは、さほど注目されていない曲がポピュラーなのが不思議だ」という。その曲はドヴォルザークの「新世界より〜ラルゴ」。日本では教科書にも載る「家路」のタイトルで、学校の下校時の音楽としても有名だ。

元・神戸女学院大学講師・生島美紀子さん(音楽学)は、この件について、「旋律の美しさと様々な日本語(文語調)の歌詞が、日本人の感性とマッチするのだろう」と分析する。
「ラルゴのゆったりしたテンポ中に奏でられる民謡音階である旋律は徐々に上行し、最後の方に最高音が来て、きれいな山型のラインを描き、満足感を生む。素朴で心地よい。
そこに文語調の歌詞『遠き空に日は落ちて(堀内敬三・作詞)』がぴったりとはまっている。ゆったり=遠き、は上手い設定だ。
私たちはドヴォルザークの器楽の旋律を、教科書で歌詞のついた“うた”として習い、歌詞が描くふるさとの情景が音楽的に強く心に響かせたのかも知れない。 チェコ民謡風の音楽も“うた”として、私たちに“ふるさと”を感じさせる。
音域が1オクターブと3度に収まっているので、口ずさみやすい。これがゆったりと、しみじみとした感情を呼び起こするのかも知れない」と話す。


最後にヴラスティミル氏は、チェコのこれまでに触れた。「1989年にソ連の崩壊が始まり、ソ連兵が完全撤退したのは1991年。“春”まで長かったが、私たちにはいつも音楽という味方がついてくれていた」と振り返る。
“ビロード革命”を経てチェコの民主化が実現し、スロバキアとの平和的分離・独立を達成するのは1993年。実に25年の歳月が経っていた。







