兵庫陶芸美術館(兵庫県丹波篠山市)では、日常生活の中に息づく美を紹介する特別展「MINGEI ALIVE-いま、生きている民藝」が開かれている。展示を担当した同館のマルテル坂本牧子学芸員に作品の背景などについて解説してもらった。
兵庫陶芸美術館では11月24日(月・振休)まで、兵庫陶芸美術館開館20周年記念特別展「MINGEI ALIVE-いま、生きている民藝」が開催されています。
誕生から100年が経った民藝(民衆的工藝の略)。提唱者で宗教哲学者の柳宗悦(やなぎ・むねよし、1889-1961年)は、その土地ならではの風土や伝統に根づいた素材や技法を用い、用途に即して、誠実な手仕事によって作られた生活道具の中に「健やかな美」を見出しました。それは特別なものではない、平凡で慎ましい日々の生活に目を向けた、新しい美の価値観でした。
生活道具の中でも、特に使用頻度の高い「うつわ」は、その時代ごとの民藝をよく体現するものといえるでしょう。その中でも陶磁器に絞り、新旧の個人作家の手仕事に焦点をあて、現代の視点からあらためて民藝のエッセンスを見つめてみようというのが本展のねらいです。
ここで、あれ?民藝って、「無名の職人」の手仕事によって作られた生活道具ではなかった?と思われる方もいらっしゃるでしょう。確かに、当時、柳が見いだした美しさとは、そのようなものの中に宿っていました。ただし、それは100年前の話。近代化にともない、失われつつあった手仕事による生活道具は、当時はまだ身近にあったからです。現実的に、私たちの生活を支える道具のほとんどが機械生産による工業製品となっている今、手仕事による生活道具は、身近なものでも、安価なものでもなくなっています。「いま、生きている民藝」は、現代においては工業製品について言うべきものかもしれません。





