社会とのつながりを持つことが難しくなり、ひきこもり状態にある人が増えている。国の推計では146万人にのぼり、神戸市でも1万8300人が該当するとされる。そんな中、当事者や家族を支える「ひきこもり支援室」が、回復への一歩を後押ししている。実際に支援を受け、少しずつ外へ出られるようになった2人が、自らの経験をラジオで語った。
「社会への不信感から、家から出られなくなった」という矢野さん(仮名)は、20代の頃に2年ほどひきこもり状態になったという。昼夜逆転の生活が続き、外に出るきっかけを失った。「夜起きて朝寝る生活で、心も体もしんどくなっていった」。
転機となったのは、「このままではだめだ」という危機感と、支援室との出会い。昼夜逆転を少しずつ直しながら、支援室に通うようになり、相談員のすすめで同じ立場の人が集う「当事者会」に参加。最初は「すごくダンマリして、しゃべることができなかった」ものの、会で声をかけてくれる人がいたことで、少しずつ人との会話に慣れていった。「今では、自分から声をかけることもあります。コミュニケーションの練習の場にもなっています」とはにかむ。

一方、藤川さん(仮名)は大学院に進学後、就職活動とうまく両立できず、次第に学校に通えなくなった。「先が見えない、どうしていいかわからない状況が続いて、相談できる人も誰もいませんでした。他人との会話がゼロで……それが一番つらかったですね」。
当時は睡眠の不調もあり、心療内科で薬をもらって眠れるようになったという。彼もまた、支援室のすすめで見学した当事者会に参加し、ひきこもりを経験した人とのコミュニケーションで、少しずつ心を開いていった1人。「いまは図書館へ行くなど外出する時間も増えた」。

「ひきこもりというと、家から一歩も出ないというイメージがありますが、実際には、散歩など身近な外出はできるものの人と接することが難しいという方も多い」と話すのは、神戸ひきこもり支援室の山本明香さん。「コンビニには行ける人、散歩はできる人、まったく部屋から出られない人――状況はさまざま。眠れない、心がしんどいなど、そういう症状があれば受診をすすめるときもあるが、必ずしもそういう人ばかりではない」と、ひきこもる“状態”に注目する。
当事者会への参加も、いきなりではなく、相談員との面談を重ねながら段階的にすすめていく。「同じような経験をした人と出会い、分かり合える部分がある。それが回復への大きな一歩になると思います」と山本さんは話す。

かつてひきこもりで苦しんだ2人だが、今では人前で話すことができるようになった。今回はラジオ放送への出演も初めて経験したが、番組パーソナリティーの質問に、自らの言葉でしっかりと答える姿があった。「思ったより緊張しなかった」「自分でもここまで来られた」と話し、少し照れくさそうに笑みを浮かべた。








