2023年に開校した近畿大阪高等学校(大阪府阪南市)。「ひとり一人の個性を大切に」、「自分のペースで学べる」という通信・単位制の学校だ。
「いい意味で自由。時間ができるので好きなことをしながら学校へ行ける。時間があるのが一番の魅力です」。そのように話すのは3年生の佐藤誉斗さん(19)だ。音楽に打ち込み、音楽活動を通して世界が広がり「ここでの3年間で心が強くなりました。成長したと思います」という。話を聞いた。

「3年生だけど19歳です。この学校に来る前、他の学校(全日制)で1年生をしたので」。佐藤さんは穏やかな表情で話し出した。かつて入学した全日制の高校にはなじめず、体調を崩しがちになった。単位が足りず留年すると言われ、「それならいっそのこと違う学校で新しく始めよう」と、近畿大阪高等学校に入学した。ちょうど開校するというタイミングで「自分たちが1期生として土台をつくっていく。面白そう」というのが入学の決め手になった。
この学校では、レポート提出・スクーリング・テストが3つの柱となる。「レポートはオンラインで提出。わからないことがあれば解説の授業に出たり、その部分だけ質問しにきてもいい。自分のペースで課題に取り組んで、期限までにレポートを出してね、と。それが終わったらスクーリングとテストです」と同校の田中裕祐・主幹教諭は話す。佐藤さんは通学コースだが、「行かなきゃいけない、というのがないから気持ち的に楽でした」と振り返る。

佐藤さんが多くの時間を費やしたのが音楽活動だ。2年生の時にできた軽音楽部に所属する。小学3年生の終わりごろからキーボードをはじめ、中学3年生の受験のタイミングまで続けた。中学でも音楽系の部活に入っていたが、「毎日練習がありついていけなかった。体調を崩して休みがちになった」という。「今は大丈夫です。軽音の練習は週4日あっても来られるようになりました。多少しんどくても『行こ!』という感じ。心は強くなったと思います」。部活動も自分のペースで参加できるという。
そんな佐藤さんが学校に来なくなることがある。それは仕事で忙しい時だという。仕事とは?実は佐藤さん、自分で作曲した曲を売って「お小遣い稼ぎをしています」。音楽をやっていると楽器や機材が欲しくなる。「最初の学校はバイト禁止だったのでどうしようと考えて……そうだ! 自分で曲をつくって売ればいいんだと。で、つくったら売れちゃった(笑)」。以来、YouTubeにアップし、大きなイベントにも自作の曲を収録したCDを持って行った。だんだん曲が売れるようになり、今ではYouTubeのBGMをつくってほしいという依頼が来るようになった。「だから、仕事を抱えている時はほぼ学校に来ない。でもそれもOKです」と田中教諭は笑う。佐藤さんも「そこが通信制のありがたいところです」と笑顔だ。

曲のアレンジも手掛け、それらを含めると50~60曲は世に出ているそうだ。「一般の人が広く耳にするものではないですが、その『界隈』では使われています。知名度も上がってきていると思います」と話す。そのような活動を通して心も強くなり、成長した。「依頼者らとのやり取りの中で、ダイレクトにものをいう人がいる。心が折れそうになることもあるが、そこでへこたれていてはいい音楽はつくれない」と思えるようになった。全日制のままではそもそも音楽活動自体出来なかった。田中教諭も「それ(音楽)に向き合う時間が十分にあったということだと思います」と語る。





