小説「時の家」(講談社)が第174回芥川賞を受賞した、兵庫県明石市在住の作家・鳥山まことさんが、このほどラジオ関西の番組に出演。受賞の瞬間を振り返るとともに、自身の創作スタイルや、近年話題となっているAIとの向き合い方についても語った。

受賞の知らせは、選考会当日に突然届いたという。通常より長引いた選考を待つ間、「落ちたのではないか」とさまざまな思いが巡ったが、電話を受けた瞬間は「ほっとしたという安どの気持ちと、『本当に取ったんだ』という驚きが同時にあった」と語った。編集者と喫茶店で結果を待ちながら、緊張の時間を過ごしていたという。
2023年、短編小説「あるもの」で第29回三田文学新人賞を受賞し、作家としてデビューした鳥山さん。芥川賞受賞作の「時の家」は、妻とともに自ら設計し、明石市に建てた自宅での経験をもとに執筆された作品で、第47回野間文芸新人賞にも選ばれ、二つの文学賞を受賞する快挙となった。単行本は2025年に講談社から刊行されている。
番組では、自身の執筆スタイルや、近年大きな存在となっているAIとの向き合い方についても率直に語った。
鳥山さんは建築士としての仕事も続けながら作家活動を行っている。その執筆は、週末や通勤電車など、日常の隙間時間を活用するスタイルだ。
賞への応募は7年くらい続けていたそうで、「そのときは趣味の延長というか『(賞を)取れたらいいな』というくらい。書くことは全然楽しかったので続けていけると思った」。地道に一文字一文字を積み上げ、「自分の知らなかった景色にたどり着いたとき、書いてよかったと思える」と、創作の実感を語る。
建築を学んだ理系的な思考も、作品づくりに影響しているという。一方で、純文学を書く中で避けられない葛藤や迷いにも向き合いながら、構造的な思考と自身の内面、その両方を行き来するのが自身の書き方だと説明する。

そうした創作観は、昨今、世間でよく活用されるようになったAIとの関係にも表れている。
番組内でAIについての感想を求められた鳥山さんは、AIを一概に否定するのではなく、「どこを自分が担い、どこを任せるか」が重要だと考えている。
「たとえば、悩みにぶち当たって考えることが自分にとって重要だったら、そこはAIに当然引き渡さない。だから、いかに自分が楽しいと思うところをAIに渡さないかというのが、自分の中で重要かなと思っています。逆に、そこ以外は、AIに渡して効率化してしまっても、僕はいいと思っているんです」
AIに委ねる一例に挙げたのが、「AIのしゃべり方」に関する表現。「たとえばAIを小説に使いたいとき、AIの言葉というのは、基本的に自分で想像するよりも、AIと対話したほうがわかりやすかったりする」。
作家としては、AIに対する恐怖はあまり感じていないとも明かす。「自分の楽しいところを手放さなければいい」という感覚があるからだという。創作の主体は、あくまで人間にあるという考えだ。




