異常気象や原材料価格の高騰、担い手不足……農業を取り巻く環境は年々厳しさを増しています。特に地域に根付いてきた伝統野菜は、手間や収益性の問題から姿を消しつつあるとか。かつて、兵庫県姫路市で広く栽培されていた「海老芋」もそのひとつだといいます。株式会社おかもと農園の代表取締役・岡本将司さんに話を聞きました。
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海老芋の名の由来は、曲がった形と海老に似た縞模様。粘りと上品な味わいが特徴の里芋の1種です。昭和初期には品質に高い評価を受け、天皇陛下に献上された記録も残っています。

しかし、栽培・収穫には重労働が伴うことや需要の減少などを背景に生産者は次第に減少。現在では、姫路市内で販売できる規模で栽培している農家はほとんどないそう。そうした状況の中、岡本さんは姫路市兼田地区で海老芋栽培を続けています。
「土寄せという作業があって、子どもたちには“土のお布団をかけてあげる”と説明しています。手をかけた分だけ大きく育つけれど、夏場の作業は本当にきついですね」と岡本さんは話します。単価は一般的な里芋より高いものの、労力はそれ以上。決して効率の良い作物ではないとか。
しかしながらこうした農業の現場を小学校での講演や保育園での栽培体験を通して伝えることで、食育に繋げています。「数年前の職業アンケートで『農家になりたい』と答えた子どもがいました。これは大きな励みになりました」と岡本さん。

岡本さんは代々続く農家の十三代目。大学卒業後は一度、関東で企業勤めを経験しましたが、耕作放棄地が増えていく故郷の風景を前に、「この土地の農業を守りたい」という思いから帰郷し、就農しました。現在は葉物野菜を中心に百品種以上を栽培し、鮮度を生かした地産地消に取り組んでいます。
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今私たちは気候や社会が大きく変わる時代に立っています。こうした渦中で地域の風土に根ざした作物と向き合い続ける人の存在は、未来への橋渡しになるのかもしれません。
(取材・文=洲崎春花)
※ラジオ関西「ヒメトピ558」2026年2月20日、27日放送分より





